だれもが底抜けの笑顔になれる場所だというのに、なぜだかいつも一抹の哀しみがつきまとってしまう……。それが遊園地という空間である。
なぜあれほどもの哀しさが漂うのだろう。楽しい時間はやがて過ぎ去ると私たちは知っている、笑顔を重ねた分だけ喪失感も大きくなってしまうということだろうか。
遊園地で襲われるのと同じような、あの特異な気分に包まれてしまう展示が、東京六本木の小山登美夫ギャラリーで始まっている。三宅信太郎「ふと気がつくとそこは遊園地だった」展。
遊び心に満ちているのが三宅作品の真骨頂
会場にジェットコースターや観覧車、お化け屋敷の実物があるわけじゃない。でも、そこにはたくさんのペインティングやドローイング、立体物が並んでいて、作品内を覗き込めばそれらのアトラクションが描かれていたり、かたどられているのを見つけることができる。
「メリーゴーラウンド!」「ホットドッグ屋さんもある!」などと一つひとつに見入っていると、大人げもなく時を忘れて夢中になってしまう。展名の通り、まさにふと気づけばそこは遊園地なのである。
一つひとつの作品に没入してしまうのは、細部に至るまで遊具や施設が描き込まれていたり、画面を覆い尽くすほどの迫力で人物や怪物のような生きものがそこに存在していたりして、眺めていていつまでも飽きないから。立体作品ならダンボールで丁寧に造形が成されていて、「そう、工作の宿題って本当はこんなふうに仕上げたかったんだ」と、つい羨望のまなざしを向けてしまったりもする。
そこに身を置いているだけで心が躍る展示である。遊び心たっぷり、というか遊びの世界にどっぷり浸かってしまえる世界観は、三宅信太郎作品にいつでも見出せる特長でもある。今展で見られる絵画や立体のほか、ときに映像やパフォーマンスも手がけ、身体がタテヨコに異様に伸びた人物や見たことのない生きもの、奇態な建物や風景などが続々と登場する三宅の表現は、つねに多様性と独創性に満ち満ちている。