感覚的ではない、明確なアマゾンの採用基準
バーレイザーはそれぞれの仕事を抱えており、採用に専従しているわけではない。アマゾン社内の採用システムで過去に何人面接をしたのかがわかるのだが、私自身、退職する際に確認すると、10年間の在籍中に1000人ほどの面接を行い、その中で採用したのは50人ほどだけだった。週に5人以上の面接を行ったこともあるが、バーレイザーには特別な手当てや報酬はない。通常の業務に加えてバーレイザーの責務を果たすには、強い「Ownership」が必要である。
しかし、アマゾンでパフォーマンスを出すためのバーに精通した「現場」の人間が面接を担当し、リーダーシップ・プリンシプルに基づいて妥協をしない高い「基準」を貫く選考をバーレイザーがリードするからこそ、採用のクオリティが維持されている。
データや数字を重要視するアマゾンの人材採用が、よくあるチェックシートなどの点数制ではなく面接官の属人的評価であるところも面白い。しかし、それも「リーダーシップ・プリンシプル」という採用基準が明確であるからこそ可能なことだ。もちろん、時には採用ミスを悔いることもあるのだが……。
前職で海外法人を拡大していた際の採用には自分なりにこだわっていたつもりだったが、採用基準が感覚的で曖昧であったために人材のクオリティーが安定しておらず、結果、労使双方が不幸になった経験がある。やはり、採用基準を明確にし妥協しないことは重要だ。
盛った話には「Why?」を繰り返して深掘り
ある人材エージェントから、こんな話を聞いたことがある。「アマゾンジャパンは常に何十人、何百人と求人しているのでとても大きなクライアントだ。でも、あまりにも採用率が低くて面倒なんだ」と。
なぜなら、面接官の質問にも「Dive Deep」が徹底されている。たとえば「Think Big」を確認するために、今までに手がけた経験があるプロジェクトについての質問に対して「こんなに壮大なプロジェクトを担当しました」といった答えが返ってくる。面接でやや「話を盛る」のはよくあることだ。
でも、アマゾンの面接官たちは回答に対して「Why?」を繰り返し深掘りしていく。デコレーションを剥ぎ取った本質を見極めるのが、面接官の責務でもあるからだ。結果としてアマゾンの採用基準はとても厳しいものになっている。
※アマゾン従業員の規範となる14項目の「リーダーシップ・プリンシパル」や、新人の育成、厳格な人事評価など、詳細は「amazonの絶対思考」に書かれています。
※問い合わせ先:https://kenhoshi.com