キューブリックに「お前は偉い」と言ってやった
―― 先ほどドラマは嫌いだったとおっしゃいましたが、映画はいかがですか?
映画は見てましたね。1日3本くらいの感じで。
―― ドラマと映画は全然違いますか?
レベルが違うんだよね。今でも外国の映画とはレベルが全然違うね。金のかけ方ももちろんだけど、やっぱり脚本家にしても監督にしても、全然腕が違うよね。
―― 矢追さんが影響を受けた作品はありますか?
みんなが知ってるのでは、『2001年宇宙の旅』ですかね。あれは大傑作です。
―― 矢追さんから見ても、宇宙の映画として傑作なんですね。
そうです。キューブリックに会いに行ったこともありますよ。あいつは僕と同じコンセプトで映画作ってるなと思って、「お前は偉い」と言ってやったんだよ。映画のラストで、変なじじいと赤ちゃんが出てくるじゃないですか。「あれはどういう意味なんだ?」と聞いたら、「僕にも分からん」って彼が言うんだよね。見てる側も作ってる側も分からないからいいんだって言うんだ。「実は、僕もそうなんですよ」と言ってやったんだよ。僕もいつも物事に決着付けない。僕の番組、みんなケツがないんですよ。UFO番組やってもUFO出てこないし、宇宙人も出てこないからね。
―― 矢追さんの普段の生活にも興味あるんですが、何時に起きるとか決めてらっしゃいますか?
いや。起きたくなったら。
―― お好きな食べ物は?
何でも食います。わざわざ食う気がしないっていうものは多少あるけれども、出てくれば何でも食うからね。
―― では、嫌いな食べ物は?
そうだね、パクチーが入ったものね。タイ料理とか、東南アジア系はあんまり好きじゃないね。東南アジアは結構遊びに行ってるんだけど、食べるのは現地の中華とか、和食とかだね。
―― プライベートなことになりますが、一度ご結婚されてるんですよね?
そう。日テレ入ってすぐね。僕、誰とも合わないんだね。相手が男であれ女であれ、同居するのは無理だね。
―― ペットはどうですか?
ペットでも無理だ。
―― こんなことを聞いて大変失礼なんですけども、理想的な死というのはありますか?
ない。そんなの理想もへったくれもない。死ぬ時は死ぬんだよ。10歳以後かな、とにかく物とか金とか財産とか地位とか名誉とかプライドとか全部捨てて、無いからね。命ももちろん執着がないんです。だから、いつ死んでもいいというよりも、いつ死ぬか分からないと思ってましてね。今この瞬間でも何か血管に詰まったら死ぬからね。次の瞬間に死ぬと思ってるから、真剣に時間を過ごしてます。真剣に過ごすっていうのはそんなに大変なことじゃないんだよ。ただ、見えるものをちゃんと見ているというだけ。見えるものを見て、聞こえるものを聞くということですよ。
―― 矢追さんが、影響を受けた人はいらっしゃいますか?
ないですね。あるとしたら母親だね。うちの母親は世界一偉大だったからね。半端なくすごい人でした。彼女が、僕に「勉強するな」と言ったから勉強しなかったんです。日本に帰ってきてからは、母親が病気だったから病院に入ったんですよ。で、ベッドの下に僕と妹2人が、ござ敷いて寝てたんです。そこを住処にして、そこから学校へ行ってたの。それから、父親がいない人向けの母子寮に移った。四畳半一間だったね。母親は、「男は頭がいいとか関係ないんだ。なんといっても健康だ。体が丈夫じゃなきゃダメだ」っていつも言ってた。「外へ行って遊んでこい」「家にいることは許さない」と言われて、家にいられないんだよ。だから、本なんか読んだことない。読むと捨てられちゃうからね。
―― 家では勉強できなかったんですね。
勉強してると「なんで勉強してるの」って言われるんだよ。「明日、試験だから」って言っても、ダメなの。学校で先生の言うことを聞いてたら100点取って当たり前なんだから、家で勉強しなきゃならないのは、学校でさぼっている証拠だってね。だから、試験の時は、家から学校までの30分に、教科書を歩きながら読むんです。
―― 高校2年のときにお母さんが亡くなられて、それからは妹2人を引き取られたんですね。
工業高校に通いながら、朝昼晩3つバイト行ってた。しかも、夜12時に終わってから飲みに行ったりしたので、毎日4時間ぐらいしか寝なかったね。それで大学に行こうというのも普通に考えると図々しいんだけれど、普通の人間じゃないから。自分が行こうと思ったら行けるに決まってるという考え方ですから。それは、日テレに入るときも同じでしたね。