イモトアヤコは命張ってるよね
―― 矢追さんが日テレを辞められた後、ちょっと光るなと思ったテレビマンや番組というのはありますか?
あんまり人のを見たことないから。
―― 今も全然テレビはご覧になってないですか?
お笑いは結構見ますね。いわゆる有名なお笑い番組はみんな見てますよ。
―― 日曜日の『世界の果てまでイッテQ!』はどうですか?
あれはたまに見ます。
―― イモトアヤコさんが世界中に行かれてますね。
うん。あいつ、命張ってるよね。
―― 『イッテQ』は日本テレビの番組ですけれども、今の日本テレビに対して何か思いはありますか?
僕の中では日テレもへったくれもないもん。みんなイーブンだから、日テレだけひいきにしているわけでもないし。
―― 日本テレビが、矢追さんのDNAを引き継いでると感じる部分は?
分からないけどね。どうでもいいですよ。人のやってることはその人の問題だから、僕がとやかく言う筋合いのものじゃない。その人それぞれの人生だからね。自分は自分の人生を生きていくしかない。それが唯一本職だからね。みんな本職を職業のことだと思ってるけど、職業なんてどうでもいい話じゃん。別に職業があんたじゃないでしょ、っていう話でしょう。結局、自分の本職は何かといったら、矢追純一という人間をやってます、ということでしかないからね。
だから、ちゃんとしたポリシーを持って、自分なりに生きていくというので本来は精いっぱいなんですよ。仕事とか、本を読むとか、テレビを見るとかいうのは、全部付け足しだからどうでもいいじゃないですか。大した問題ではないよね。ただし、人にはそれぞれの生き方というものがあるので、それは尊重してあげないといけないよね。これが基本ですよ。人の生き方を尊重する。それで、自分を自由に生きていく。これしかないですね。
自分に嘘ついちゃダメです。本音で生きないと生きてる意味ないから。今、本音で生きている人が少ないよね。みんな人のせいにして、言い訳だらけだよね。「世の中がこうだから」とかさ。
―― 番組論をお伺いしたつもりが、人生論にもなって、面白いお話をたくさん伺えました。ベールに包まれていた矢追さんの姿が、少しだけ垣間見えた気がします。
番組ってやっぱり作り手の人間が出るものですよ。逆に言うと、作り手側の意思が反映してなかったら、それは番組とは言えないんだよ。自分が不在で、ただ視聴率とか世の中の潮流とか会社の意向とか、そういうので作ったらいかんのですよね。一応作品なんだから、自分の名前が出るんだから、それには責任を持たないとね。「予算がなかったから」とか、「上司がうるさいことを言ったから」とかっていう言い訳は効かない。そこを誤魔化すと、すべてがダメになります。自分を誤魔化すとね。
―― 番組をつくるのも人生を生きるのも、今この瞬間を真剣に、なんですね。
僕も人のこと言えないけど、うわの空で生きちゃダメだよ。
やおい・じゅんいち/1935年、満州国新京に生まれる。中央大学法学部法律学科卒業。1960年に日本テレビ入社。「11PM」「木曜スペシャル」などを手がけ、特にUFO、超能力、超常現象、ネッシーなどをテーマにした番組で話題を作る。「宇宙塾」主宰。石川県羽咋市にある宇宙博物館「コスモアイル羽咋」名誉館長。著書に『ヤオイズム』など。
現在、メルマガにて小説を執筆中。「ハードボイルドのアクションもの。UFOとか世界の裏側とかの情報が満載になってます」
写真=鈴木七絵/文藝春秋