秋元康氏による連載「秋元康 ロングインタビュー」の第1回を一部転載します(文藝春秋2023年8月号)。

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“秋元康による”秋元康のインタビュー

 指定された都内のホテルの一室に行くと、“秋元康”が「よろしくお願いします」と頭を下げながら迎えてくれた。イメージより、腰の低い人だなと思った。それに、テレビで見かける“秋元康”ほど、太ってはいないんだなと思った。そのことを伝えると、「よく言われます」と彼は笑った。「僕は、毎日、飽食の日々を送っていて、そのせいで相当、太っていて、態度も大きいんだろうと……。だから、実際に会うと、イメージと違うんで驚く人もいます。まあ、先入観ってそういうものでしょう」。

 六本木を一望できる大きなリビングのソファーで改めて、自己紹介をしながら名刺交換をした。秋元の名刺には肩書きがなく、秋元康事務所の住所と電話番号が記されているだけだった。ICレコーダーとメモとペンを用意していると、「何か飲み物を頼みましょう」と言うので、「じゃあ、コーヒーを……」と答えたら、秋元が自ら、部屋の電話でルームサービスをオーダーした。そう言えば、この広い部屋には、“秋元康”しかいない。こういうインタビューとなると、秘書やらマネージャーやら、お付きが何人もいるものだが……。そのことを聞くと、「発言をチェックされているみたいで、やりにくいでしょう?」。サービス精神なのか、本当に人がいいのか、わからない。このインタビューで、どこまで“秋元康”の本音を引き出せるだろうか?

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秋元康氏 ©文藝春秋

 ——まず、最初にお伺いしたいのは、どうしてこのインタビューを受けていただけたんですか?

 秋元 月刊「文藝春秋」という雑誌だからですかね。こういう堅い雑誌に、僕のような軽い人間が出るのは面白いなと思って……。それに、連載する作家は、スキャンダルを書かれないという都市伝説があるじゃないですか?

 ——(笑)。今回の依頼は、月刊「文藝春秋」ですから。「週刊文春」とは部署が全く違いますので、何かあっても、何のお役にも立てないと思いますが……。

 秋元 (笑)。存じております。「文春砲」の生みの親、新谷学さんは、「親しき仲にもスキャンダル」を信条となさっていると聞いたことがありますし……。僕たちは、そういう世界で生きてきたので、そんなことは期待していませんよ。何となく、月刊「文藝春秋」で連載するのも面白いと思っただけです。

 ——秋元さんは、軽い人間なんですか?

 秋元 少なくとも、世間からはそう見られているんじゃないでしょうか? おニャン子クラブとかとんねるずとかAKB48とか……。決して、堅いタイプとは思われないでしょう?

 ——でも、美空ひばりさんの「川の流れのように」とかジェロの「海雪」とか、稲垣潤一の「ドラマティック・レイン」とか「クリスマスキャロルの頃には」とか、作詞家としての地位をちゃんと築いているじゃないですか?

 秋元 ジャンルを問わず、幅広く書き過ぎましたね。日本では、何でも屋は評価されません。やはり、この道一筋の方がいいんでしょうね。寿司屋だって、そうじゃないですか? 何十年も寿司だけを握り続けているから、すきやばし次郎さんとか、小松弥助さんとか、そこで握るかたは伝説の寿司職人として、尊敬されるんです。仮に、すきやばし次郎さんがイタリア料理も作っていたり、小松弥助さんが中華料理も作っていたら、なんか、嫌じゃないですか?