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なぜ、あの時、ラジオ番組に原稿を送ったのだろう?

 ——元々は、中央大学附属高校の2年生の時に、ニッポン放送のラジオ番組に台本を送ったのがきっかけで、放送作家になるんですよね。

 秋元 はい。せんだみつおさんの「燃えよせんみつ足かけ二日大進撃」という番組の中にラジオドラマのコーナーがあったんですが、それを聴いているうちに、なぜか、自分でもそういう台本を書けるような気がして、コクヨの原稿用紙を買ってきて、『平家物語』のパロディーを書いて送ったことを覚えています。

 ——どんな内容のパロディーだったんですか?

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 秋元 碌でもない内容だったと思いますよ。「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし」と、習ったばかりの冒頭の部分でギャグを作ったんでしょうね。

 ——所謂、“ハガキ職人”(ラジオ番組などへの投稿マニア)だったんですか?

 秋元 いえいえ、初めて、原稿を送りました。

 ——それを、後にニッポン放送の社長になる亀渕昭信さんが採用してくれるんですよね。

 秋元 正確には、奥山侊伸(こうしん)さんという放送作家と亀渕昭信さんの2人に、「高校生なのに面白い奴がいる」と言われて、色々な仕事をもらうようになっていくという感じですかね。

 

 ——せんだみつおさんに、初めて会った時、どんな印象でしたか?

 秋元 売れっ子のタレントさんというのは、火の玉のように光り輝き、燃えています。そばにいるだけで、火傷しそうになるくらい……。せんだみつおさんは、文化放送の「セイ! ヤング」という深夜のラジオ番組のパーソナリティーを担当されていたんですが、何もネタがない時、その日の新聞をスタジオに持ち込んで、ただそれを読みながら、ああだこうだ言って2時間持たせた時に、タレントの勢いってこういうことだなと思いました。

 ——プライベートでも交流はあったんですか?

 秋元 その頃は僕も大学生だったので、あまり、プライベートでは遊びませんでしたね。ただ、ある時、ラジオ番組の生放送が終わってから、青山のラーメン屋でせんだみつおさんにご馳走になったことがあったんですよ。あれから、50年近く経った今でも、テレビ局の廊下とかで、せんだみつおさんにバッタリお会いすると、「秋元、ラーメンご馳走したの誰だっけ?」と聞かれます(笑)。「せんださんです」と答えると、「そういう恩は忘れちゃダメだぞ。せんだみつおに何か仕事をあげなきゃって、いつも思ってないと……」と説教されます。別れ際に、「せんださん、今日はこれから(仕事は)何ですか?」って聞くと、必ず、「NHK!」って答えてから、「家に帰って、NHK観るの……出演じゃなくて……ナハナハナハナハ」って大騒ぎしながら去って行きます。サービス精神が旺盛なんですね。

 ——他に高校2年生の時に台本を書いていたラジオ番組っていうのは?

 秋元 山口百恵さんの番組とか……。

 ——当時の山口百恵さんは、大人気アイドルでしょう?

 秋元 はい。僕は山口百恵さんと同学年で、学校へ行けば、クラスメイトが、雑誌の「GORO」の山口百恵さんのグラビアを見て、可愛いと大騒ぎしているわけですが、ニッポン放送のスタジオでは、目の前で、僕が書いた台本を読んでくれているわけですからね。なんか、変な感じでした。

もしかしたら、山口百恵と恋に落ちていたかもしれない

 ——山口百恵さんは、どんな方でしたか?

 秋元 まさに、スターでしたね。その頃、ニッポン放送の3階にカフェがあったんですけど、深夜、僕が廊下を背にして原稿を書いていたんです。そしたら、エレベーターが開くチンという音がして、いきなり、背中越しに凄い光を感じたんですよ。振り返ったら、日出女子の制服を来た山口百恵さんがマネージャーと一緒に歩いていて……。多分、超過密スケジュールだった山口百恵さんが、何かの録音に来たんだと思うんですけど、あの時、初めて、スターのオーラというものを感じました。本当に、後光が差していたんですよ。もしかしたら、僕が疲れていて、幻覚を見たのかもしれないし、たまたま、振り向いた時に、廊下の照明がそう見えただけかもしれませんが、僕は、今でも、山口百恵さんのあの後光が、スターが持つ“オーラ”だと思っています。

 ——オーラですか。でも、普段は普通の高校生ですよね、秋元さんと同学年の……。

 秋元 確かに、普段は普通の女子高生でもありました。ただ、スタッフやマネージャーと浮かれて話しているイメージがあまりなくて、部屋の隅で内田百閒の『贋作吾輩は猫である』を読んでいるような少女でした。高校生が夏目漱石の『吾輩は猫である』を読んでいる時に、内田百閒の『贋作~』の方を読んでいる山口百恵さんって、凄くないですか?

秋元康氏の連載「秋元康 ロングインタビュー」全文は、「文藝春秋」2023年8月号と、「文藝春秋 電子版」に掲載されています。

文藝春秋

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