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「若衆が『おい、コラ』、『何しとんのや!』と」小林旭が語る『仁義なき戦い』モデルの親分との対面

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「広島極道は芋かもしれんが、旅の風下に立ったことは一遍もないんで。神戸のもんいうたら猫一匹通さんけん、おどれらよう覚えとけや」

 広島で繰り広げられた戦後最大の抗争事件を描いた『仁義なき戦い』は、それまでの任侠路線から実録映画に舵を切った東映の大ヒットシリーズ。昭和48年に1作目が公開されてから今年で50年が経つ。

1973年11月、映画「仁義なき戦い 頂上作戦」の製作発表 左から菅原文太、梅宮辰夫、松方弘樹、小林旭 ©共同通信社

サングラスは深作欣二監督の提案だった

 小林旭(84)が自らの俳優・歌手人生を熱く語る「文藝春秋」の短期連載「小林旭 回顧録」第3回では、同シリーズの第3作「代理戦争」から第5作「完結篇」まで計3作に出演した小林が、ファン垂涎の制作秘話を語り尽くした。

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 菅原文太をはじめ梅宮辰夫、松方弘樹、北大路欣也らが泥臭いアウトローを演じる中、ブランド物のスーツを颯爽と着こなし、サングラスをかけた小林の存在感は異彩を放っていた。

菅原文太 ©共同通信社

「サングラスをかけたのは、サクさん(深作欣二監督)の提案だった。『旭さんは目が優しすぎるから、色眼鏡をかけた方がいい』と言われて、そんなもんかなと思ってね。

 もともと俺は色眼鏡をかけてるようなやつはあんまり好きじゃない。NHKの歌番組で司会をしていた宇崎竜童に『ゲストの前で失礼だよ』と言って外させたり、デビューしたばかりの鳥羽一郎には『やくざ者じゃないんだから』と注意したこともある。

 もっとも、映画となれば話は別だ。スクリーンに目が映らない分、できるだけ表情で見せることを心がけた。顔を突っ張らせて、全神経をグーッと集中すると、何も言わずとも『てめえ、この野郎』という雰囲気が出るんだな」