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「若衆が『おい、コラ』、『何しとんのや!』と」小林旭が語る『仁義なき戦い』モデルの親分との対面

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鋭さや動き方は服部武氏との会話で感じ取って表現

 小林が演じたのは、広島のヤクザ・武田明だ。モデルとなった服部武氏は、戦後20年以上に渡って激しく対立していた広島の組織を団結するために、政治結社「共政会」の結成に奔走した斯界の大物である。撮影に入る前に小林は服部氏に直接会って話を聞く機会を持った。

小林旭  Ⓒ文藝春秋

「最初に会ったのはキャバレーだった。お客さんがみんなはけたあと、シーンと静まり返った薄暗い店の中で、服部さんだけがスポットライトを浴びたように浮かび上がって見えたのを覚えてるよ。

 よく見ると、周りを若い衆がずらりと囲んでる。すげえなと思いつつ、世間話をしながら本質を聞き出そうとしたんだ。ところが、俺があんまりしつこく聞くもんだから若衆が怒り出してね。席を立ち上がって『おい、コラ』、『何しとんのや!』と怒鳴るのを親方が『いいから、いいから』とたしなめてくれた。

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 その後も何度か話を聞かせてもらったけど、何しろ、広島のやくざをまとめようとしたほどの人だから貫禄がある。やくざたるものこうでなきゃいかんという気概があって、ずいぶん役作りの参考にさせてもらったよ。服部さんと話す中から感じ取った鋭さや、先を見通した動き方なんかは作品でも表現できたと思う」

 ほかにも、日活のスターだった小林が東映の『仁義なき戦い』に出演するに至った意外な経緯や、高倉健と二人だけで過ごした時間についても語っている。「小林旭 回顧録」第3回「『仁義なき戦い』の熱」は、2023年7月10日発売の月刊「文藝春秋」8月号と「文藝春秋 電子版」(7月9日公開)に掲載される。

「若衆が『おい、コラ』、『何しとんのや!』と」小林旭が語る『仁義なき戦い』モデルの親分との対面

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