岩下志麻(84)の夫で映画監督の篠田正浩氏が3月25日に逝去し、岩下は『極道の妻(おんな)たち』のリバイバル上映の舞台挨拶を急きょ降板。悲しみに包まれながらコメントを発表した。
「今の私があるのは本当に篠田のおかげだと思っております。篠田が『僕たちは映画という魔物に取りつかれて2人で魔物退治をやってきたようなもの』と申しておりましたが、そんな篠田に今は感謝の言葉しかありません。58年間人生をともにして参りましたので、今はただ、悲しみと喪失の思いで胸がいっぱいです」
岩下志麻は1941年1月3日生まれ、東京都出身。父親は俳優の野々村潔、母親は元新劇女優の山岸美代子、伯父に歌舞伎役者がいるという「芸能一家」の家系だった。
21歳で成城大学文芸学部を中退するが、小さい頃は精神科医を志していたという。だが病気でその夢を断念、17歳でNHKドラマの『バス通り裏』(58年)に出演したことをきっかけに女優業がスタートした。
プライベートでは温厚でのんびりした性格の岩下が突然の起業、結婚
19歳の時、のちに夫となる篠田正浩監督の映画『乾いた湖』(60年)で映画デビューして松竹に籍を置くことになった。
同じころに小津安二郎監督の『秋刀魚の味』(62年)のヒロインに抜擢され、その演技力を高く評価された。小津は次回作『大根と人参』でも岩下をヒロインに起用する予定だったが、急逝して『秋刀魚の味』が小津の遺作となった。
第2の、そして人生最大の転機は26歳で訪れた。篠田正浩監督と結婚すると、篠田はほどなく松竹を退社。岩下は松竹に在籍していたが、2人で独立プロダクションの「表現社」を設立した。
「極道の妻たち」などの印象が強いが、プライベートでは温厚でおっとりした性格の岩下。その彼女が結婚・起業という大胆な行動に出たことは、周囲を驚かせた。