いま日本映画界を第一線で支える映画監督たちには、8ミリ映画を自主制作し、才能を見出され、商業映画にデビューした者たちが少なくない。そんな監督たちに自主映画時代を振り返ってもらう好評インタビュー・シリーズの第10弾は、庵野秀明氏。『エヴァンゲリオン』シリーズや『シン・ゴジラ』『シン・仮面ライダー』などで絶大な支持を受ける庵野氏の自主映画時代とは? 自身も自主映画出身監督である小中和哉氏が聞く。(全4回の1回目/2回目に続く)
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『エヴァンゲリオン』シリーズなどアニメ作品のヒットメーカーであり、『シン・仮面ライダー』など実写特撮作品も連発する庵野秀明もまた、学生時代に8ミリで映画作りを始めたフィルムメーカーの一人だ。庵野自身が素顔のままウルトラマンを演じた8ミリ作品など、当時の映画作りの様子について語っていただいた。
あんの・ひであき 1960年山口県生まれ。 監督・プロデューサー。学生時代から自主制作映画を手掛け、その後TVアニメ『超時空要塞マクロス』(82年)、劇場用アニメ『風の谷のナウシカ』(84年)等に原画マンとして参加。 88年、オリジナルビデオ『トップをねらえ!』で初めて本格的商業作品を監督。95年TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を監督。以後の主な作品に、『ラブ&ポップ』(98年)、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(2007年)、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(09年)、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(12年)、『シン・ゴジラ』(16年、脚本・編集・総監督)、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(21年)、『シン・仮面ライダー』(23年)。
初めての8ミリ作品『ナカムライダ―』
―― 8ミリカメラはいつ頃初めて手にしたんですか?
庵野 高校2年の時だったかと思います。小遣いをためて、それまでの貯金を全部使って一式買いました。
―― アニメを撮るためだったんですか?
庵野 最初はアニメだったんですけど、アニメだけだともったいないので、シネカリ(注1)の特撮とかもやってました。あとはスチールアニメとか、ストップモーションアニメとか。いわゆるトリック撮影の撮り方みたいな本に書いてあったのを見ながら、高校の時はやってましたね。友達が生徒会長をやっていて、中村という名前だったんだけど、「ラ」がかぶっているから『ナカムライダ―』にしようというすごい単純な発想で、『仮面ライダー』と『ウルトラマン』を足して2で割ったようなのを作ってましたね。