タイムリミットは四十八時間
大山が編集部に着くより先に、午前九時からデスク会議が行われていた。編集長の新谷と五人のデスクで次号のラインアップを決定する会議だ。前日までに渡邉は新谷に、ベッキーと川谷が不倫をしていて長崎に婚前旅行へ行くという事実を伝えていた。休養から復帰したばかりの新谷に迷う理由はなかった。
「大きな扱いでいけそうだな」
大山を棚橋のアシにつけて、長崎へ行かせることも、新谷と渡邉が事前の話し合いで決めていた。デスク会議では、大山だけでなくさらにカメラマン二人とグラビア班の記者二人の計四人をチームに加えることが決まった。トップ級の扱いの特集にすることはほぼ決まりだ。グラビア班の二人は“追いかけ取材”にあまり慣れてはいないが、ヘルプを入れたチーム編成は珍しくない。大山は東京で下取材をしてから四日の朝一番で長崎に行くことにして、まずはカメラマンとグラビア班記者が三日のうちに長崎へ飛んだ。
棚橋は三十八歳で、大山は三十三歳。新しく加わった四人は二十代後半や三十代前半の男性たちだった。
この記事を載せる号は一月七日に発売される。校了はその二日前の火曜日である一月五日であり、その前夜である一月四日から原稿を書き始めるのが通常のパターンだ。
限界まで引っ張るとしても一月五日の朝までには直撃取材をする必要があった。
大山とすれば、役割を告げられてからは四十八時間、長崎に着いてからは二十四時間しか猶予がなかったことになる。
(#2に続く)
本書の再現ドキュメントの元になったのは、株式会社ドワンゴが取材・制作した「ドキュメンタリードラマ『直撃せよ!~2016年文春砲の裏側~』」。ニコニコ動画で公開中。
※こちらは予告編です。