背中を押してくれたファンの声援
「板東英二がんばれー!」
楽天側の内野席からだった。そちらを見ると、僕が投げる事を聞きつけていたファンの方がかみじょうパネルを両手にかかげて応援してくれていた。ふー、危うく面白みのない芸人になり下がるとこだったぜ。楽天ファン(5、6人)のみんなありがとう。例えチンチンに怒られようが、目の前のファンに答えない芸人は芸人やない。僕は白球をゆで卵に持ち変え、叫んだ。
「これ、ゆで卵やないかぁ~!!」
そこからの細かい記憶はないが、気づけば始球式も終わり、社長が僕の前にいた。
「かみじょうさん、ありがとう! よく聞こえなかったけど、選手の皆さんも笑顔だったので、来年もよろしくお願いします!」
えっ、来年?? ええの? こうして選手の皆さんの笑顔に救われた1年目は幕をとじた。
続いて2年目のお話だが、このペースで書くとえらい文字数になるので、元東海大四高の西嶋亮太投手の超スローカーブを真似して大暴投になり、嶋基宏捕手に迷惑をおかけした事だけお伝えしておきます。
明石トーカロ球場のマウンドの上にも3年
そして、3年目の今年もこの日がやって来たのです。本番直前、いつものように監督、コーチ、選手の皆さんに挨拶を済ませた僕は、ベンチ横で待機していた。スタッフさんが僕に近づいてくる。注意事項を聞く準備はできていた。
「2分あります」
「えっ……」
手渡されたのはワイヤレスマイクだった。存分にしゃべってくださいとの事。まさに石の上にも3年。明石トーカロ球場のマウンドの上にも3年である。なんか嬉しくて泣きそうになった。マウンドにあがり、
「これゆで卵やないかぁ~」
ウケた。
マイクがあるから通じる!
さらに続けた。
「カープファンの皆さん! 昨シーズンはリーグ優勝おめでとうございます! そして先日のオランダ戦の菊池選手! ありがとう!(松井裕樹投手だったし) 今シーズンは広島と楽天で日本シリーズやぁ!」
パァーン。ストライーク!
今までで一番の拍手をいただき、3年目も無事に終える事ができた。
「楽天ファンの皆さん! 日本一おめでとうございまーす!」
来年の始球式で叫べるなら、こんな幸せな事はない。
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※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。