見せるだけ、待っているだけではない売場
売場の配置や売り方にも、新店らしさがある。文芸書の思い切った仕入れと入り口正面での大量陳列(いわゆるタワー積みに象徴される)という有楽町店の売り方と比べると、人気小説家の単行本は、駅からは奥まった所にある書籍館の3階、サイン本が並ぶ特設コーナーは、さらに一番奥に位置する。さっと寄ってさっと買いたい雑誌や文庫本やコミックスは、地下1階の駅から近い売場に、好きな本をじっくり選びたい本好きには、わざわざ3階まで足を運んでもらいたいという。
雑貨売場では、従来の書店とは販売方法が異なる。書店は通常、スタッフからはお客様には声を掛けないのだが、本物の化石や剥製、標本などを売る「Naturalis Historia」や、こだわりの雑貨や食器、食材などを売る「神保町いちのいち」では、店頭で迷っているお客様には、スタッフから積極的にコミュニケーションを取り、それぞれの商品が持つエピソードを伝えることで、購入を促している。スーパーマーケットや量販店ではなくて、町の八百屋や呉服屋、宝飾屋のような売り方。雑貨を売る複合書店は増えているけれど、売場に合わせて売り方も考えていかなければならないのではないか。
書籍館1階は、料理、生活、ファッションなどの本の売場、カフェや食器、食材の売場とつながっている。この売場の企画編集棚「tanakanata」は、生活や食に寄り添った本が並ぶ。朝の光が似合う絵本、定番のおやつのレシピ集、夕景のオレンジが印象的な小説、生活に根ざしたエッセイが並ぶ。ひきだしの中も開けてほしい。いわゆる在庫の保管スペースではなく、隠された陳列になっていて、宝物のような発見があるかもしれない。