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「こういう風見さんもありだよね」というキャラづくり

――原作があると難しいかもしれないですけど、当て書き的な部分というのはあるんですか?

野木 原作ものでも当て書きはしますね。そこはある種の割り切りで。だって、二次元どおりにいかないし、役者だって二次元の真似をしたいわけじゃないし。中には原作を読まないっていうこだわりを持っている役者さんもいて、それも間違いではないと思うし。こちらはこちらで実写としてのその役を作っていくしかない。なので作業としては、原作ファンが見た時にできるだけショックがないようにというか。初めはちょっと違うと思ったとしても、見ているうちに「ありかな」と思えてくればいいかなと。全く同じにはどうしてもできないんですよね。セリフ1つとっても、漫画のセリフと実写のセリフは違う。あと、演じる役者さんによってイメージはどうしても変わってきてしまうので。原作を下手にトレースするよりも、役者に合わせてイメージを近づけるようにするほうが成功する場合もあるんじゃないかと。

 たとえば『逃げ恥』の風見さん(大谷亮平)は最たるもので、原作とビジュアルも年齢も違うんです。それで同じセリフを言わせても、違和感がでてしまう。漫画の風見さんは最初から結構いい人キャラなんですけど、ドラマは星野(源)さん演じる津崎とのイメージバランスもあったので、前半は悪役キャラ的ポジションにしておいて、そこからいかに原作に近づけていくか。徐々に彼の心の内を見せていって「やっぱり風見さんだった」「こういう風見さんもありだよね」という流れにしていくしかないというところがありましたね。

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風見さんを演じた大谷亮平(左端)、百合ちゃんを演じた石田ゆり子(右端) ©時事通信社

――オリジナル脚本と原作もの、どちらがやりやすいですか?

野木 一緒ですね(即答)。漫画や小説の構成とドラマや映画の構成って全く別なので、オリジナルだろうが原作があろうが、結局イチからプロットを組まなきゃいけないですから。この間、岡田(惠和)さんのラジオに出させてもらった時も「苦労は同じですよね」「原作があるとラクしてると思われちゃうけどね」って話をしたんですけど。確かに原作ものは、根幹ができあがっているラクさはあるけれど、原作がこうだからできないって部分もあって、壊さずに面白いドラマをつくるためには針の目を通すように考えなきゃいけない苦しさがある。二次元と三次元の表現の違いもあるから、なんの工夫もなくそのまま実写にしたら成立しない部分も沢山あったりして。そういえば『主に泣いてます』なんかも、どうしたら原作のノリをドラマで成立させられるのかに心血を注ぎましたね。

――僕はあのドラマはビックリしたんです。あの原作をドラマ化して面白くするのは相当難しいだろうなと思って。すごい漫画的な表現じゃないですか。だから、正直ちょっと無理なんじゃないかなと不安だったんですけど、見てみたら面白くて。

野木 そう言ってもらえると、苦労した甲斐がありました(笑)。

そろそろオリジナル書かないと許されない気が……

――いま、ドラマにせよ映画にせよ、全体が原作ものばかりになってしまっている現状をどう思われますか?

野木 やる意義があればいいんじゃないでしょうか。実写化によって新たな世界が広がるとか、単純にこの作品が好きだから映像化したいとか、そういうモチベーションがあれば。ただ、「なんでもいいんで、こういうキャストにハマりそうな漫画ください」と出版社に言っちゃうようなのは、さすがにちょっと違うんじゃないかなと。作品にも失礼だし、不幸しか起こらないと思ってしまいますね。

 でも、究極的に言えば、原作ものだろうがオリジナルだろうが、世の中に面白いドラマや映画があふれるのならそれでいいとは思うんですよね。元は何だって、視聴者にとって実はあんまり関係がない。例えば、『逃げ恥』の原作が漫画だろうが何だろうがどうだっていい人たちは山ほどいて、脚本家が誰かだってどうだっていい人たちも、それこそ山ほどいるわけですから。

――野木さん自身もそろそろオリジナルをやりたいという気持ちは?

野木 ちょっとやらなきゃ許されない感じが……(笑)。毎回いろんなところで「野木のオリジナル脚本が待たれる」とか書かれて。「おお、まあ……うん」みたいな。私の場合、特に原作ものにこだわっているわけではなく、面白そうな仕事を受けているうちにそうなっただけなんですけどね。

のぎ・あきこ/脚本家。2010年『さよならロビンソンクルーソー』で第22回フジテレビヤングシナリオ大賞受賞。脚本作品に『主に泣いてます』(12年)、『空飛ぶ広報室』(13年)、『掟上今日子の備忘録』(15年)など。『重版出来!』(16年)と『逃げるは恥だが役に立つ』(16年)でコンフィデンスアワード・ドラマ賞 年間大賞2016の脚本賞を受賞した。

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