きっとそれは大きな、大きな感動なのだろうと思う。高温の火によってドロドロに溶けた透明な鉱物が、自分のディレクションと職人の確かな業によって、見たこともないかたちを成していくというのは。つくり手が存分に味わったであろう創造の悦びを追体験できるような展示が、東京六本木のギャラリー・シュウゴアーツで開催中だ。三嶋りつ惠の個展「光の場 HALL OF LIGHT」。

三嶋りつ惠「光の場 HALL OF LIGHT」展示風景、シュウゴアーツ、2019
copyright the artist
courtesy of ShugoArts

2万2000個というガラス玉に囲まれる体験

 三嶋りつ惠が創作に用いるのはガラスである。しかもただのガラスではない。1000年の歴史を誇るヴェネツィアン・グラスの伝統を生かしてつくられるそれだ。

 若くしてヴェネチアに移住した三嶋は1996年、ヴェネツィアン・グラスで名高いムラーノ島で腕の立つ、そしてものづくりへの情熱溢れる職人がいる工房と出会った。以来、親方や職人たちと理解を深め合いながら、ともに作品をつくり上げてきた。

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 今展で観られるのも、そうした二人三脚による創作の成果の数々である。

 ギャラリーへ足を踏み入れると、空間の中央に煌めく構築物があって、眼が引き寄せられる。天井に届かんばかりのタテに長い六角形の構造物があって、壁面にあたる部分は、小さいガラス玉を無数に連ねた糸状のもので覆われている。ガラスの御簾が上空から垂れ下がっているとでもいおうか。

三嶋りつ惠「光の場 HALL OF LIGHT」展示風景、シュウゴアーツ、2019
copyright the artist
courtesy of ShugoArts

 輝きに眼を細めながら周りをうろうろしたあと、そっと内側へ身を滑らせてみる。その数じつに2万2000個というガラス玉に囲まれると、そこには明らかに外界とは違う特別な空気が流れていた。眼に映るすべてのものが美しいという体験は、なかなか得難いもの。何を見て時を過ごすか、それが人の心のありようを決めるのだなと感じさせる。

三嶋りつ惠「光の場 HALL OF LIGHT」展示風景、シュウゴアーツ、2019
copyright the artist
courtesy of ShugoArts
三嶋りつ惠「光の場 HALL OF LIGHT」展示風景、シュウゴアーツ、2019
copyright the artist
courtesy of ShugoArts