優勝への道その一 投手王国を築きあげよ
日本ではまだWBCの余韻も覚めやらぬ頃、大会で大車輪の活躍を見せた平野佳寿投手はその日の天候のように晴れやかに再び成田の地を踏んだ。
同じく国会の証人喚問に日本中が騒ぎ立てる3月23日。聖地京セラドーム大阪では彼の後進達が昨年のセ・リーグ覇者広島を相手に快投を演じる。左のエース松葉貴大投手に新戦力の澤田圭佑投手、黒木優太投手と三投手の完封リレー。松葉投手は7回を無失点、三塁を踏ませないピッチングで開幕目前の仕上がりとしてはこの上ない出来栄えを見せる。
2017年春、Bs投手陣は間違いなく例年よりその層に厚みを増した。金子千尋、西勇輝、ブランドン・ディクソン、松葉貴大、東明大貴、山崎福也、山岡泰輔、フィル・コーク。かつてはリリーフ頼りと言われたBs先発陣も今ではこれだけのメンツを擁している。彼らにしても長い道のりだったはずだ。12球団一優勝から遠ざかったこのチームは今、最下位から頂点へと逆襲の狼煙をあげる。
優勝への道その二 T-岡田選手を中心に結束力を発揮せよ
自分がまだ場外イベントステージの形を球団と共に模索していた2007年。2軍期待の選手インタビューを録音し、場外ステージで放送する案を球団に打診してみた。快諾をくれた球団が最初の企画に思わぬビッグネームのインタビューを手配してくれた。当時まだ岡田貴弘の名で出場していた2005年のドラフト1位指名選手だ。
ぎこちないインタビュアーと、まだまだ初々しい高卒ルーキーのインタビュー。ファンの方々が喜んでくれたかは別として、自分としては初めて間近で聴いたプロ野球選手の本気で本音の飾らないトークがとても印象的で、一気に背番号「55」に魅せられて行った。
そして2009年のBsファンフェスタ。自分は選手のカラオケ大会のコーナーの司会を務める事になっていた。その時球団から「併せて岡田選手の新登録名を発表するので、そのままDOMIさんに司会を務めて欲しい」との打診を受けた。
何とも嬉しい縁だ、断る理由が無い。あの背番号「55」の新登録名を彼と同じステージで発表出来る事に背筋が伸びる思いだったが、ピンクの恐竜の着ぐるみで現れた彼を見て一気に両肩の力が抜けて行く。容姿に似合わずお茶目で愛らしい一面だった。
その後チームが低迷に苦しんだ2015年。我々ファンとして何か後押し出来る事が無いかとBsステージ(京セラドーム等での場外ステージ)の球団フラッグにファン有志で寄せ書きをしてチームに送った事がある。多くのファンの思いが詰まった寄せ書きを贈呈するその日、ファン代表の元にフラッグを受け取りに来てくれたのはなんとT-岡田選手と安達了一選手だった。
まさか試合当日の、それも主軸の野手がわざわざ来てくれるなんて思いもしなかったので、後で聞いた自分も大変驚いたし、それ以上に本当に嬉しかった。
ORIX Buffaloes の歴史はまさにT-岡田選手と歩んだ歴史だと言っても過言ではないだろう。彼の成長が、栄光が、苦しみが我々Bsファンの歴史なのだ。その彼が2017年、いよいよ選手会長としてフィールドに立つ。キャリアハイの成績を狙うかつてのホームランキングの元にチームが結束すれば、猛牛打線も必ず再臨する事だろう。
優勝への道その三 俺たちに出来ること、それはやっぱり応援だ
2017年春。OP戦を12球団中3位という結果で締め括ったBs。これでOP戦、レギュラーシーズン、交流戦、ファームと全てが最下位に沈んだ昨年の雪辱を一つ果たす事が出来た。しかしOP戦の上位2チームはロッテとソフトバンク。そこに昨年の覇者日ハム、FA補強に成功した楽天、返り咲きを狙う古豪西武が加わり相変わらずペナントレースは熾烈なものとなるだろう。
各球団が各球団から星を奪い合う展開が予想され、恐らく勝率5割5分程度のチームがパ・リーグの覇者になると予想する。引き分けを加味しても60敗程度の敗戦を喫する事となるだろう。
連勝街道を行けるに越した事はないが、時として敗戦が続き我々ファンのイライラが球場を覆うかもしれない。球場帰りの居酒屋、自虐のネタで大いに盛り上がる事もあるだろう。何れにせよ我々ファンは今シーズンもチームの勝敗で一喜一憂するのだろう。ファンとはそういう生き物なのだから。
しかしどんなに苦しい時でもチームが、選手が、首脳陣が諦めていないものを我々が諦める必要は無い。いやむしろ、チームを諦めムードが覆い始めたその時こそ変わらぬ我々ファンの後押しが必要なのだ。
苦しい戦いを強いられている時こそ京セラドームに、ほっともっとフィールドに足を運ぼう。不甲斐ない戦いをしていれば叱咤し、感動的な戦いには大いに賞賛を送ろう。2017年OP戦にふくらんだ蕾が秋には大輪の花を咲かすと信じてBsファン同志諸君、今シーズンも最後までバファローズの戦いを見届けようじゃないか! 12球団一優勝から遠ざかったチームの逆襲が今始まる。
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※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。