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ときに「弱者」にもなるバランス感覚

 いわゆる“キラキラ女子”のハシリのように言われるはあちゅうさんですが、ライター・ヨッピー氏と「ダサイ話をする」がテーマの対談で、「スクールカーストの最底辺だった」「陰キャラだった」などイケてない過去も告白しています。この、きらびやかな経歴の裏にある“本当は自分に自信がない私”演出、人間性に奥行きを持たせようとする高等テクですよね。インターネットという有象無象の世界で生きていくための、こういうバランス感覚もすごい。さらにその対談で「(今でも当時スクールカースト上位だった子に会うと)『私みたいな者が口をきいていただいている』みたいな感覚になる」という発言に私、ピンときました。こういう「強者の自覚を持ちながら未だ弱者の立場でものを語り、結果より強者感を出してくる」人、いるわ~。スクールカースト上位者たちへの勝利宣言を、そんな形で示すなんて、いけずだわ~。ということで、飛びぬけた図々しさの一方で、「弱者」の手法にも長けているはあちゅうさん。同じような弱者ぶりっこは大物女性作家もよくやっている手法なので、よってはあちゅうさんは作家です。

「心が谷に落ちる瞬間」を想起させる新刊の表紙 

 そして極め付けはライターor作家論争の序盤、ツイッターでの「作家は取材先が自分」「本を書いていると心が谷に落ちる瞬間があるのだけど、自分を深く掘りすぎると人は病む」という発言……。自分の中にはそれだけの鉱脈があると信じられる、その根拠なき思い込みこそ、クリエイティブたる証なのではないでしょうか。自分を掘って、そして病んで。尽くして、泣きぬれて、そして愛されて(テレサ・テン『愛人』より)。編集者に「はよネタだしせい」とせっつかれていたこのタイミングにこのホットトピックス、私を苦しみの淵から救い出してくれたはあちゅうさんには本当に感謝しかないですし、だからはあちゅうさんが作家って名乗るならもう作家でいいと思いました。