教育は無限、教員は有限
教育とは厄介なもので、いくらやっても終わりがない。
勉強一つをとっても、子どもそれぞれに得手不得手があり、理解の進度もちがう。個々の状況に応じた手厚い指導ができるに越したことはない。
しかも勉強だけをみていればよいというわけでもない。いじめをはじめとする子ども間の人間関係にも十分な配慮が必要であり、さらには親子関係にまで踏み込まざるを得ないこともある。教育とは「善きもの」であり、それゆえ、無限の足し算がつづいていく。
その一方で、それを担ってくれる教員は、無限にいるわけではない。「教育は無限」だけれども、「教員は有限」なのだ。だから、教員は疲弊していく。
そしてこの記事で指摘したいのは、その疲弊の流れに、教員集団がみずから乗っかってしまう危険性である。
教員の勤務実態――学校滞在は約12時間
連合総合生活開発研究所が2015年に実施した教員調査では、教員の過酷な勤務実態が改めて浮き彫りになった。
小学校教員の平均像は、出勤時刻が7時31分、退勤時刻が19時4分で、在校時間は11時間33分に達する。中学校教員は、出勤時刻が7時25分、退勤時刻が19時37分、在校時間は12時間12分で、小学校教員よりもさらに長時間の勤務実態が認められる。
同研究所による2007年時点の調査で、民間の労働者では出勤時刻が9時00分、退勤時刻が18時15分、在社時間(職場にいる時間)が9時間15分であり、小中学校の教員はそれと比べて圧倒的に長時間働いていると言える。
休みなき教員の一日
インターネット上ではいくつかのサイトで、教職を目指している大学生に向けて「教員の一日」が紹介されている。たとえば、教採合格ネットにも、小学校と中学校それぞれの具体的な例が示されている。これらのページは、けっして教職の過酷さを誇張するためのものではなく、単純に「教員の一日」を具体化したものである。
朝早くから夜遅くまで、授業以外にもさまざまな業務が詰め込まれている。よく見てみるとわかるように、教員の一日には、労働基準法第34条に規定されている「休憩時間」がない。
昼食の時間帯は、給食指導である。配膳の指導から生徒とのコミュニケーションまで、けっして休憩にはならない。じつは制度的には、授業後の15~16時台の時間帯に「休憩時間」が設けられているものの、そんなものはまったく機能していないのだ。