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手ごたえのある面接って何だ

 何とか面接を終え、笑顔でオフィスを辞去しながらも、私はとても動揺していました。なぜって、エージェントから聞いていた面接と全然違ったからです。「これって好感触なの? それとも望みが薄いの?」さっぱりわかりません。

 自分が質問するばかりの面接なんて初めてです。こっちは会社のことがいろいろ知れてよかったですが、向こうはどう思ったのでしょう。「緊張してます」宣言のおかげで、ツカミはよかったと思ったのですが、手ごたえはまるでありません。面接における手ごたえって何でしょう。

面接は双方のすり合わせ作業

 3日後、選考通過の連絡が来ました。通過はうれしいのですが、いかんせん手ごたえがなかったので、イマイチ実感がわきません。しかしまあ、特定のスキルを求めている企業においての面接なんてこんなものなのかもしれません。

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 次の面接の面接官は1人で、30代くらいの事業の統括マネジャーをしている男性でした。

 結論から言うと、ここでも志望動機や退職理由は聞かれませんでした。

 新聞記者としてどのような仕事をしてきたのか、1日の流れに沿って説明を求められたり、アルバイトのハンドリング経験についてかなり細かい点まで突っ込んで質問を受けたりしました。

 完全に、私が「何ができるか」と向こうが「何をしてほしいか」のすり合わせ作業です。

画像はイメージ ©iStock.com 

 こちらからの質問タイムもありましたが、前回ほど長くはなかったので、前回十分理解できた中身は省き、数点尋ねました。ちなみに今回は「活躍している人の共通点」を聞けました。

 何となくここまで話しながら「これだけ業務遂行能力の確認が入るということは、内定が出るのでは」と感じました。

 思わず手汗をかきます。こんなきれいなオフィスで、あんなすごい提示額で働けるのかと思うとそりゃ手汗もかきます。

面接官から言われた衝撃の一言

 最後に、面接官からこう切り出されました。

「ライター職では、現在正社員がいません。今後、この事業に2~3年投資するのは間違いありませんが、その後撤退する可能性はゼロではないためです。撤退した際、ライター職の人ができる仕事が会社にないので」

 え!?

 最初から正社員として雇うつもりないのに、正社員で募集かけたの!? それって駄目じゃない!? ていうか、今言うってことは、正社員として雇う気持ちがないってことだよね……。

 手汗をかくほど高ぶった気持ちが急速に冷えて行くのが分かります。

 12月に入り、正式に内定の連絡が来ました。やはり、契約社員採用。そして、提示額は550万円。決して悪い話ではありません。

 仕事の内容は非常に面白そうです。いずれの面接官も感じがいいし、話の理解が速い。仕事をするうえでのストレスが少ないだろうと思いました。オフィスも見たことがないほどきれいです。

 でも、最初に聞いていた条件、話とはまるで違う。

 初めから契約社員採用ということを知っていたなら問題ありません。しかし今回は、正社員採用と思って面接を受けたら、契約社員だったのです。

 しかも、最終の提示額も、はじめの話とは全然違います。これも、最初から550万円と分かっていたら、まったく気にならなかったでしょう。「そんなにもらっていいの!? やった~!」と飛びついていたと思います。

 どこでこういうことになったんでしょう。会社かエージェントが話を盛っていたんでしょうか。「騙されていたんじゃないか」。モヤモヤがぬぐえません。

 転職を経験した友人数人にも相談しましたが、「そんなのありえない!」「やめたほうがいい」という意見ばかり……。やはりイレギュラーなことのようです。不信感マシマシです。

いまも後悔していること

 魅力的な話ではありましたが、このモヤモヤした気持ちを抱えたまま仕事をするのは難しいと感じ、内定を辞退しました。この感じでは、入社後も「実は業務内容が違う」なんて話にならないとも限りません。

 正直、これが1社目の挑戦でなかったら、そのまま入社していたと思います。

 しかし、このときはまだ転職活動初心者だったので「もっといい会社があるんじゃないか」という淡い期待を抱いていましたし、当初の提示と様々な条件が違うことに不安しかありませんでした。

 今思えば、このときしっかり「なぜ最初の提示とこんなにも違うのか」を確認して、納得できるなら入社すればよかったのです。いろいろな会社を受けましたが、いちばん「一緒に働きたいなぁ」と思う人が多い会社だったのに……。

 ですが、何となく遠慮してしまい、最後まで「モヤモヤ」を吐き出せず、結果、チャンスを逃してしまいました。人はいつも後から気づくのです、逃した魚は大きかったと。

 そして私は、年をまたぐ面接地獄へと堕ちたのでした――。

キヨシマの転職活動メモ
一、転職活動に遠慮は禁物。気になる点があったらしっかり理解できるまで聞いて、納得してから内定受諾が辞退か決めるべし

 ※この連載は、新聞記者として5年働いたキヨシマによる、「脱力系」転職活動記です。書かれていることは全て現在進行形のノンフィクションです。