2019年(1月~11月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。社会部門の第3位は、こちら!(初公開日 2019年9月28日)。
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事故物件というと、借りるにしても買うにしても「結構安いんでしょ?」と言われることがよくあります。しかし、ここにはいくつかの誤解があります。結論から言ってしまうと、事故物件だからといって必ずしも値段が安くなるわけではないのです。
たとえばURのように「この部屋で殺人事件が起きました」「前の入居者が自殺しました」などと正直に告知して安くしてくれるところもあるのですが、一方でそうした事実を隠し、通常の価格で契約を結ぼうとしてくる悪徳業者もいます。
そのような業者からの被害を防ぐため、私は事故物件の情報提供サイト「大島てる」を運営しているのですが、たとえ全ての不動産屋が正直に「ここは事故物件ですよ」と伝え、価格を割り引いたとしても、それでも絶対に安くならないケースも存在します。それは、「誰もそこが事故物件だと気づいていなかった」という場合です。
強盗容疑で逮捕された中国人の男
一体どんな事故物件なのか。具体的な例を紹介しましょう。これは、関東地方のある団地で実際に起きたケースです。複数の路線が乗り入れ、都心へのアクセスも良い県内有数のターミナル駅から徒歩圏内という好立地に建つその団地には、一人の中国人の男が住んでいました。
やがて男は部屋を引き払い、中国に帰ります。そして、その部屋には新しい住人がやって来ました。人気のエリアに建つ団地なので、おそらくほとんど間を置かずに引っ越してきたのではないでしょうか。何の変哲もない、ごくごく当たり前な退去と入居。しかし、それから数年後、前の住人が帰国先の中国において強盗容疑で逮捕されたことから、事態は急変します。