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ハイテク専制支配に成功している習近平

 習政権はポピュリズム的な手法を好み、最新のITツールをフルに駆使して習近平の個人崇拝や党の宣伝を推し進める傾向が非常に強い。2013年春の政権発足前後から、ネット上にはしばしば投稿者の素性が不明な(実質的には当局関係者によると見られる)習近平賛美の「神動画」が投稿されたり、事実上は官製のネットスラング「習大大」(習おじさん)という言葉が強引にホットワードになったり、習近平の腹心の微博(中国版ツイッター)アカウントがカリスマ官僚アカウントとして賞賛されたりと、ネットを使った世論工作がコツコツと続けられてきた。

 そんな地道な努力が成果を上げたのか、近年は『学習中国』アプリしかり、もはや当局がその姿を隠さず、公的機関の名を堂々と出して宣伝をおこなうケースも増えている。今年1月29日、国営放送CCTVが旧正月に合わせて発表した、若者向けのラップ調で習近平政権の功績を褒め称える動画『スゴいぜ、俺達の2016年』などもその代表だろう。いずれも「お上」が作った政治コンテンツにしてはクオリティが高く、普通に見られる出来である点が大きな特徴だ。

現政権の主張がノリのいいラップで紹介される『スゴいぜ、俺達の2016年』の画面。CCTVのYoutube公式アカウントが配信する元動画(https://www.youtube.com/watch?v=uPgbo1yHstY )もスゴいぜ。

 前政権の胡錦濤時代(2003~2013年)、中国ではネットの普及によって民間の言論が活発化し、ネット上では体制を批判・風刺するコンテンツがしばしば庶民の人気を集めた。ところが近年は当局がネット言論統制を強めるいっぽう、ネット上で人気を博しやすいものが何かを分析し、民間人の制作物よりもクオリティの高いコンテンツを投入することでむしろネットを専制体制の強化に活用するようになっている。

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 習政権の政策は外交や経済面では狙い通りに100点満点の成果を挙げているとは言い難い部分があるが、こと庶民を対象としたネット分野のプロパガンダにおいては相当うまくやっているのである。