異空間? 夢の国の近くで野球観戦

 JR京葉線舞浜駅。それは4月1日のこと。誰もが知る、夢の国の最寄り駅の改札を出ると、まず目に飛び込んできたのは「チケット完売」のプラカードを持つスタッフの姿だった。夢の国に向かおうとしている家族連れの誰もが一瞬、「ええっ」という表情をするものの、すぐに状況を把握し冷静さを取り戻しているようだった。プラカードには「イースタンリーグ M-G戦 チケット完売」と記されていた。

「マリーンズにとって東京と千葉の両方からお客様を呼べる浦安という地域で試合を行いたいという想いがずっと前からあった。その中で、新球場が完成するという情報があり、そこから動き出したプロジェクトだった」

 浦安市での二軍戦開催を1年間かけて推し進めたマリーンズ振興部関係者は今回の開催の意義を語る。チケットは前日3月31日までに前売り予定だった2500枚を売り切り、当日券ナシの完売御礼。大きな盛り上がりを見せる中、試合が始まった。

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夢の国の近くに新しくできた浦安市運動公園野球場 ©梶原紀章

 舞浜駅から徒歩で10分ほど。グラウンドからも東京ディズニーシーの絶叫系アトラクションであるタワー・オブ・テラーを目にすることが出来る。三塁側スタンドを最上段まで登ると、様々なアトラクションが見え、象徴的なプロメテウス火山がくっきりと浮かび上がる。夢の国のこれだけ至近距離で、二軍戦とはいえ、プロ野球の試合が行われることはある意味、とても画期的だ。なによりも様々なコスチュームに身を包む人々で、ごった返す舞浜駅にマリーンズの二軍戦売り切れのプラカードが出ており、そして時折、野球グッズに身を包んだファンが歩いているというなんともいえないミスマッチは感慨深いものがあった。

浦安市はまだファン開拓の余地あり

 ちなみに浦安市運動公園野球場のこけら落としゲームとなった4月1日のジャイアンツ戦は13時試合開始のデーゲームだったが、この球場にはLED照明塔が6塔設置されており、ナイターも対応可能。ということで7月22日のイーグルス戦は夕方の16時試合開始となっている。もしかしたら20時台にお隣で上がる花火を拝見させていただけるかもと、かすかな期待をしてしまう。

 これに伴い、「ナイターで試合をして、試合中に花火を……」という意見もなくはなかったが、インプレー中に10分近く花火が上がっていてはさすがに試合進行に支障をきたすということで、花火までにちょうど試合が終わりそうな時間帯を開始時間として設定。運がよければ、試合終了後に花火を見られるという流れだ。

「元々、浦安市は阿部慎之助選手の出身地ということもあり、千葉でありながらもマリーンズファンというよりはジャイアンツファンが多い地域です。今年は3試合だが、今後は試合数を増やして、ファン開拓をしたいという想いがある」と今回の試みをきっかけに同市へのさらなる地域密着を狙うマリーンズ振興部の鼻息も荒い。確かに昨年のマリーンズファンクラブ会員を市町村別比率で見てみると千葉市が1位24.9%なのに対して、浦安市は1.5%。ZOZOマリンスタジアムから半径20キロ圏内で、ファミリー層の人口も多い同市には、まだまだ開拓の余地と魅力があるように感じる。

「この球場は施設も充実しているし、交通の便もよい。いろいろな可能性があると思う。いろいろと企画をしてどんどん盛り上げていきたい」(マリーンズ振興部)

 浦安市のご理解とご協力をいただきながらマリーンズは日本の誇る夢の国のお隣で、地域に根差した新たな活動を始めようとしている。ゲーム後の舞浜駅はやはり人でごった返していた。夢の国を堪能した多くの家族連れが楽しかった思い出を語り合う中で、少しばかりのマリーンズファンの会話が盛り上がる。

ダフィーとダッフィー ©梶原紀章

「そういえばマリーンズにもダフィーがいるよね!」。そう、マリーンズの新外国人にはマット・ダフィー内野手がいる。15年にアメリカ3Aで20本塁打、104打点を記録した強打者だ。覚えた日本語は「ミンナノトモダチ! ダフィーちゃんだよ!」。ディズニーの人気キャラもびっくりの愛らしい選手だ。

梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)

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※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。