いまから70年前のきょう、1947年4月7日、労働基準法(労基法)が公布された。このあと9月1日に大部分が施行され、11月1日には全面施行にいたる。

 労基法は、前年11月に公布された日本国憲法の第27条2項の「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」との規定にもとづいて制定された。もっとも、その法案が3月4日に衆議院本会議に上程されたとき、出席した議員は少なく、定足数(議事の進行・議決に必要な最低限の出席員数)も怪しい始末だったらしい。一方で人々の関心は高く、傍聴席は超満席になったという。

労働基準法「改悪」阻止と「男女雇用平等法」の試案の撤回を求めハンストに入る女性団体(1984年) ©共同通信社

 戦前の工場法などでは、労働者に対し若干の保護規定を置くだけにとどまった。それに対し労基法では、賃金・労働時間・休憩・休日・年次有給休暇・安全衛生・労災補償など労働条件全般にわたって使用者(雇用者)の守るべき最低基準が定められている。その規定のほぼすべてに罰則が定められ、違反行為者の上に立つ者(事業主)もともに処罰されることになった。また、法律違反の契約は、当事者の意思にかかわらず無効とされた。法律の実効を確保するために、使用者を監督する労働基準局、都道府県の労働基準局および労働基準監督署も設けられた。

ADVERTISEMENT

 労基法は、その後の労働条件の国際水準の変化、また1985年の男女雇用機会均等法の成立や、1990年代以降の規制緩和の動向などにしたがい、全面的な改正がたびたび実施されてきた。1987年の改正では、労働時間がそれまでの1日8時間・週48時間から、1日8時間・週40時間に短縮されている。有給休暇の最低給付日数も6日間から10日間に延長された。

2016年の働き方改革実現会議には女優の生稲晃子も参加(中央) ©共同通信社

 しかし、近年、いわゆるブラック企業や過労死などの問題が取り沙汰されるのを見るにつけ、労基法が軽んじられている感を強くする。そんないまだからこそ、この法律の第1条に掲げられた「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充(み)たすべきものでなければならない」「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」という基本理念を噛みしめたい。