米国総合内科学会が「毎年の健診は害の方が多い」
その中に、米国総合内科学会による「健康診断(Health Checkups)」という項目もあり、次のように断言されているのです。
「健康な人に毎年の身体検査はたいてい不必要で、益よりも害をなすことが多い」
病気を早く見つけることで、長く元気でいられるはずの健康診断に「害」があるなんて、にわかに信じられない人が多いかもしれません。ですが、実際にそう断言されているのです。この項目には、次のように理由も書かれています。
「あなたの体のために、主治医は血液や尿、心電図といった検査をオーダーするかもしれません。時折、これらの検査が、リスクを持たない健康な人に行われることがあります。しかし、毎年の健康診断の有効性を調べた研究がたくさんありますが、概して、健康維持や長生きにはつながらないようです。また、入院の回避や、がん、心臓病による死亡の予防にはほとんど役立ちません」
臨床試験でわかった「健診は長生きにつながらない」
実際に欧米では、定期的に健診を受けた人のほうが、健診を受けない人よりも長生きするかどうかを調べた臨床試験がたくさん行われています。そのうち信頼性の高い14の臨床試験(無作為化比較試験)を総合的に解析した研究(対象者は計約18万3千人)によると、定期的に健診を受けても総死亡率は低下せず、心血管病やがんの死亡率も減少していませんでした。つまり、健診を受けても、長生きにはつながっていなかったのです(BMJ 2012;345:e7191)。
チュージング・ワイズリーの健康診断の項目では、その害についても触れられています。その一つが「偽陽性」です。偽陽性とは、実際には問題がないのに「異常」とされてしまうことを指し、これによって不必要な検査や治療につながってしまうのです。
たとえば、心電図で異常が見つかったとします。すると、それを詳しく調べるために、心臓CTや心臓カテーテルによる精密検査が必要とされるかもしれません。その結果、「異常なし」で一安心したとしても、どちらの検査も放射線による被ばくを伴います。カテーテルによって脳梗塞や多量出血を起こす合併症も、まれとはいえゼロではありません。