文春オンライン

院長! 私の顔を歌舞伎町のホストみたいにしてください──高須克弥院長インタビュー

高須院長に美容整形のことをマジメに聞いてみた。<第3回>

2017/04/18
note

 せっかく美容整形を受けたのに、理想通りの出来上がりにならず、後悔する人も少なくない。そんなトラブルを避けるためには、どうすればいいだろうか。最終回は「できあがりを見せておくことが大事だ」というかっちゃんに、聞き手のジャーナリスト、鳥集徹さんもカウンセリングを受け、美容整形のシミュレーションをしてもらった。果たして、医療取材歴20年の五十路のジャーナリストは希望通り「歌舞伎町のホスト」になれたのか…?

「私、失敗しませんから」ってドクターXみたいな医者はダメだね

鳥集 美容外科にはトラブルがつきものです。思っていたような顔にならなかったとか、二重にしたけど両目で大きさが違ったとか、不満を持たれる方も多いと思うんですが。

高須 それはよくあること。腰痛が治るっていって手術したら足がしびれちゃったとか、視力が回復すると思ったら失明しちゃったとか、こういう失敗の理由は専門家じゃないとわからなかったりするけど、美容外科の失敗は素人でもわかるもんね。ブスになったか美人になったか、若くなったか若くなってないか、見ればすぐわかる。だからトラブルは隠せないよね。

ADVERTISEMENT

鳥集 患者も医師もトラブルは避けたいと思うはずですが、そのために一番大事なことは何でしょうか?

高須 ウチはパソコンで整形のシミュレーションをして、できあがりのイメージを見せておくの。「この通りに作ります」って、スマホでシミュレーションの写真を撮ってもらって、出来上がりと比較してもらう。違うところがあったら直しますし、それは無料ですよって。

鳥集 昔は、まだパソコンの性能が低かったから、シミュレーションも出来なかったと思いますが、その頃はどうされていたんですか?

高須 それが僕のとこは昔から出来たの。たぶんWindowsが発売される前からやってたんじゃないかな。独自でソフト作って、設計図を患者さんに見せてました。当時は絵ですけどね。鼻をこれだけ高くするとか、目をどんな二重にするかとか、仕上がりの予想図を見せるわけです。それをインスタントカメラで撮って、渡していたの。でもこれは他ではやってなかった。

「謙虚に『これは出来るけど、あれは出来ない』って言える医者がいい」 ©三宅史郎/文藝春秋

鳥集 シミュレーションをしてくれないクリニックもありますから、トラブルを防ぐためにも、事前のカウンセリングが大切だと思います。カウンセリングではどんなことを聞くといいでしょうか。

高須院長のビフォーアフターをお手本に…

高須 カウンセリングをしても、トラブルは起きますよ。大工と一緒でね、パース(完成予想図)を描いておいて、「こういう家を作ります」って見せられればいいけど、何もないのに「いい家作ります」じゃね。患者だけじゃなくて、医者も考えていることを患者に伝えることが出来なきゃ、トラブルが起きるに決まってる。だから謙虚に「これは出来るけど、あれは出来ない」って言える医者がいい。

高須院長(before) 写真提供:高須クリニック
高須院長(after) 写真提供:高須クリニック

 「私、失敗しませんから」なんてドクターXみたいな医者はダメだね。僕は自分を実験台にして、新しく導入する美容整形や若返り手術を試してきたでしょ。僕が美容整形の見本。それを見せて「同じことしましょう」でいいから、一番わかりやすいよ。

整形依存症の患者を食い物にしてはいけない

鳥集 一度整形しただけでは満足できず、何度も整形を繰り返して、どんどん顔を変えていく人もいます。

高須 それは整形依存症。心の病気だね。美容外科の患者というのは、本来は見た目も心も正常で、「美人になりたい」「若くなりたい」という単純な望みを持つ人たちのはずなんです。ところが、「人形みたいになりたい」とか、「漫画の主人公みたいになりたい」というのは、心が壊れてる人たちだから、美容外科で相手にしちゃいけないんですよ。食い物にしたら犯罪です。だって、ハゲた人が美容院にパーマかけに来たらどう思う? 「毛が一本ありますから私どもにおまかせください。素敵になりますよ」っておかしいでしょ。

鳥集 高須クリニックにも、何度も整形を繰り返す人が来ますか?

高須 よそで何度も整形手術やった人は、顔も体も壊れてるんだから、形成外科医に診てもらったほうがいい。そのために、形成外科医はいっぱいトレーニングしてるんだから。壊れた人を治すのは、形成外科医が得意ですよ。もちろん、うちでも大歓迎。僕のところにもそういう人がたくさん来る。僕はパーツを見ただけで、どこの病院でやったかわかるからね。よく知ってます。

鳥集 いわゆる、サルベージ手術(救済手術)ですね。

高須 そうです。でも、サルベージはラク。今より良くなればいいんだもん。美容外科も本当はそうあるべきなんだけど、最初から途方もない美人になりたいという人が来るからね。元からの美人が、もうちょっと美人になるのはすごくラクなの。例えば秋田犬を柴犬にするっていうのはわりとラク。土佐犬をブルドッグもまだいける。でも、ブルドッグをチワワにしてくれって言われたって、もうどうしたらいいかわかんないわけだから。少しくらいは似てないとダメなの。

鳥集 整形依存症にならないためには、何が大切でしょうか?

高須 心の病気なんだから、精神科や心療内科で治療するべきなんです。整形依存症の人って、自分を醜いと思い込んでいる。心の病気を持っている人は、ちょっと話せば、すぐわかりますよ。心療内科から紹介を受けてくる人もいるし、逆に心療内科を紹介することもある。「電車に乗ると、みんなが私の鼻がおかしいという合図を送るんだ」とかってね。そういう人には「あなたの鼻がおかしいと思う人を連れてきて。そしたら作ってあげる」って言ってます。統合失調症の人は多いですよ。夜中に「整形しろ」って声が聞こえるっていう人とかね。

鳥集 自分の顔というのは、アイデンティティ(自己同一性)を形づくる重要な部分ですよね。それが変わるって、どんな感じなのだろうと思うのですが、人間も変わってしまうのでしょうか。

高須 いや、変わらないですよ。僕は、年取ってきた人をまた若くするだけですから。それ以外はやりたくない。外見が変わったら完全に自分と違うものになるかっていうと、例えばゲイバーで働く人のことを考えても、見た目が男から女になっても、人間は変わらないよね。