「ありがとう」と書かれたボールの届け先
やっと本題へ。
大野雄「この日のブルペンは普通でした」
加藤「僕は3回から意識しました。めちゃくちゃ良かったです。特にストレートが。でも、僕は5回で終わりました。バットが左手の甲に当たって交代」
大野雄「ドラゴンズには暗黙のルールがあって、誰もノーヒットノーランという言葉を発しないんです。山井(大介)さんが横浜スタジアムで達成した時も僕は次の日に先発でホテルで見ていたんですが、絶対に言わなかった」
梅津「ロッカーにいましたが、口にしなかったですね」
高橋「見て見ぬふりでした」
大野雄「周平はいつも『ナイスボール!』と声を掛けてくれますが、その日は静かでしたね」
福田「最初はレフトで9回からファーストでしたけど、全く話しかけてないです」
笠原「僕は2軍だったので、妻と買い物していました(笑)」
藤嶋「ブルペンもシーンとしていました。でも、ついに6回に祖父江(大輔)さんが『マジで頼む!』って言っちゃいました(笑)」
梅津は先輩の必死な姿を目撃していた。
梅津「実は9回が始まる時に大野奨太さんがロッカーに走ってきて、相手のデータを見て『よし! 大丈夫!』と言ってグラウンドに戻ったんです」
高橋「大野さんらしいなぁ」
大野雄「初めて聞いた」
梅津「すごく格好良かったです」
あの日、実はアクシデントがあった。
大野雄「今だから言えるんですけど、2塁ランナーの時に外野フライでタッチアップして3塁に走って、左足の内転筋を痛めたんです。藤嶋には『行けるようにしといて』と頼みましたし、(堂上)直倫には『代打の準備をしといて』と。でも、ヒット0本ということで、そのまま行きました。最後は痛みを忘れていましたね」
福田「それにしても、あのジャンプはひどかったな(笑)」
高橋「でも、たぶん流行るっすよ。今、高校野球で優勝すると、みんなマウンドで指を1本突き上げるじゃないですか。来年からあのジャンプです」
試合後のサイドストーリーを加藤が明かした。
加藤「病院からナゴヤドームに帰った時、『ありがとう』と書かれたボールがロッカーに置いてあったんです。ものすごく嬉しかったですね」
大野雄「ノーヒットノーランを達成すると、日付が刻印された当日の試合球が3つもらえるんです。1つはカトちゃん、1つは奨太さんに渡して、あと1つは自分で持ち帰りました」
最後に2020年への意気込みを語った。
梅津「大野さんと一緒に戦えるよう、しっかり準備したいと思います」
藤嶋「来年も大野さんが投げる試合は絶対ゼロで抑えたいです」
笠原「1年間ローテーションを守りたい、勝ちたいです」
高橋「とにかく優勝。優勝に貢献するだけです」
加藤「たくさんのピッチャーと組ませて頂いたのに最後は大野さんだけになりました。来年はまず大野さんと離されないこと。できれば、僕が引っ張っていきたいです」
福田「ピッチャーは大野、野手は周平が引っ張ってくれると思うので、僕も乗り遅れず、チームの中心にいられるように頑張ります」
大野雄「ドラゴンズの仲間は最高です。この仲間たちと、さらにファンの方々と、次は優勝という喜びを分かち合いたい。来年は優勝あるのみです」
今度はリーグ制覇の祝勝会を開きたいものだ。
◆ ◆ ◆
※「文春野球コラム ウィンターリーグ2019」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/17819 でHITボタンを押してください。
この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。