日本の外国人労働者は100万人を突破、という現実
では実際に我が国の移民に関する状況はどうなのかというと、一口に言えばお前らの議論がどうであろうが人手不足が進行して外国人労働者への需要が高まった結果、日本なりに外国人労働者の受け入れ人数はどーんと増えております。厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況を見れば一目瞭然、2016年10月末の時点で外国人労働者は100万人を突破、前年同期比約2割増の175,873人の増加になっております。マスコミやネット民が同調しようが批判しようが必要であり外国人も働きたいので日本にやってきているのが現実なんですよね。
外国人労働者の受け入れの是非という入口のところで日本社会がすったもんだ議論しているものだから、むしろ実際に日本ですでに働いてくれている外国人が日本での生活で困ったことや日本社会とどう協調していくか、日本社会がどうやって彼らを受け入れるべきかみたいな議論が置き去りになったまま迷子になっているのが実情のように感じられます。それは、守られるべき最低賃金や労働時間が厳守されず厳しい環境で働かされる研修生という名の外国人労働者だったり、日本の文部科学行政の硬直化もあって潰すに潰せないでゾンビのように存続している地方の私立大学が滅多矢鱈に集める外国人留学生に満足な授業をカリキュラムに押し込めないために単なる出稼ぎ労働者になってしまう外国人の若者だったり、日本が好きだ、日本で働きたいという人たちが完全に置き忘れられている世界がそこにはあるのでしょう。
あるアンケート調査では、日本が好きだと回答していた東南アジアの労働者が、帰るときには結構な割合で日本が嫌いになったという結果まで出ています。もちろん、調べ方によってはいろんな結果も出るのでしょうからそれだけ見て「日本の雇用主はもっと外国人労働者を大事に扱え」と主張するわけではないのですけど、少子化だ、労働力不足だと喚いている割に、観念的な人種差別論や移民に対する日本社会風土の話に終始しているのは彼らの身の回りに外国人労働者たちがいないからなんだろうと思うのです。
現実問題を「べき論」で語るのは、見たい現実だけを見るメカニズム
介護の現場や運送、コンビニなどの小売りでは、状況が一変してきています。大手チェーンでは特に日本の顧客対応を行うための教育を組織的に行う動きが広がっていて、外国人の国別や言語別どころか出身地方別のきめ細かな対応をやっている企業もあります。外国人を店長に起用するチェーンなどでは日本人と変わらず研修を受ける姿や、新しい日本人バイトをトレーニングする立場となった外国人が地元メディアでインタビューを受けて記事になっていたりするのが現実です。
こういうのを見ると、移民であれ老人介護であれ育児であれ出産であれ就職であれ、現状で発生している問題を「政治的課題」だとして、ある種のべき論で振り回すことがいかに無駄であり、人間の見たい現実だけを見るメカニズムぐらいにしか機能していないんだろうなと感じるわけですよ。感じるわけですよ。移民賛成派は差別のない日本社会を実現したいとかいい、移民反対派は移民が増えるお陰で犯罪が多発するのではないかと怖れる。もちろん、移民を受け入れるべき、受け入れるべきではない双方の理屈は、まだ増えていない日本の移民に関する問題を左右両側から論評しているのであって、移民をもっとたくさん受け入れいている欧州や、日本の移民受け入れ状況についてもちゃんと把握しておくべきであろうと思うのです。
例えば、先にも述べた日本は移民が加速度的に増えてきているんですよ、前年比2割増しで100万人突破ですよ、という情報があります。それに対して「ああもう日本の人口の2%弱が外国人か、日本も移民社会になっていくのかなあ」と思う人もいれば、逆に「ドイツみたいな人口の9%弱が外国人、2割が移民の背景がある国民になるぐらいじゃなければ日本は不充分だ」と主張する人もいるでしょう。半分水の入ったコップを見て「まだ半分残っている」のか「半分しか残っていない」のか、受け取り方が異なるのと同様、どんな問題にも多かれ少なかれ受け取る側の問題ってのが大きいんでしょう。
移民が来たから犯罪が増えたのだとか、移民によって日本人の仕事が奪われているとか、いろんな「政治的課題」はあると思いますが、私自身は「自分たちの子供たちの世代で、我が子が海外に出稼ぎに行かないと食えない時代が日本に来ないでほしいなあ」という一心でどういう努力をするべきか思案しちゃうほうなんですけどね。
昨今では、日本の働き手が上海などの中国企業に2倍、