「文藝春秋」1月号の特選記事を公開します。(初公開 2019年12月16日)

◆◆◆

 12月3日付けInman社の報道によると、『The Big Short』(邦題『マネー・ショート 華麗なる大逆転』)でアカデミー賞脚色賞を受賞したチャールズ・ランドルフの脚本で、ユニバーサル・ピクチャーズとブルームハウス社が、ウィーワーク社(WeWork、以下ウィー)の誕生からソフトバンクが救済するまでの顛末を映画化するとのことだ。

誰が孫正義を演じるのか?

 主人公はウィーの創業者で元CEOのアダム・ニューマンと、彼の金主となり今や世界の金融界で最も有名な日本人である孫正義さん(マサ)のお二人だ。台本はウィーに関する本を執筆中のカトリーナ・ブルッカーのレポートを基にするという。

ADVERTISEMENT

19年7-9月期決算を発表する孫正義氏 ©AFLO

 ランドルフは映画プロデューサーでもあり、これまでラッセル・クローやニコール・キッドマンを主役にしてきたが、さて今回は誰がマサを演じるのか? お話はシリアスなドラマなのか、それともパロディー化されるのか? いや、シリアスに描くほどパロディーになるかもしれない。

 強欲なユダヤ人(アダム・ニューマン)、日本人(孫正義)、アラビア人(サウジアラビアのムハンマド皇太子)、インド人(孫さんの会社の経営陣)など極めて多人種の間の会話・商談がどのように描かれるのか? ランドルフの手腕によってはまたオスカーを獲得するかもしれない。

「二人で『世界初の1兆ドル長者』になろう」

都内のウィーワーク ©文藝春秋

 一体どんなシーンが出てくるのだろうか? アダムとマサが「二人で『世界初の1兆ドル長者』になろう」と語っているところか? アダムがトランプ大統領の娘婿のジャレッド・クシュナーにまるで不動産開発計画のような中東和平案を進言し、マサと一緒にサウジ皇太子に逢いに行くところか? 株式公開に失敗し一挙に「ウィー帝国」崩壊の危機に陥り、マサがアダムに17億ドルの「プラチナ・パラシュート」を用意して辞任を要求する場面か? その報道を聴いて怒り狂う従業員たちの姿か? 

 一時は会社の評価額600億ドルとも800億ドルとも語って、公開主幹事を取りに行った投資銀行家たちはどのように「公開断念」を伝えたのか? 今年1月には470億ドルと評価した彼らは救済時に、いかにして80億ドルまで評価を引き下げたのか? たかが映画に過ぎないが、そこに展開される人間模様を垣間見ることには興味がつきない。