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箱根駅伝で“あの踏切シーン”が見られない「箱根登山鉄道、台風19号深刻被害のその後」

2019/12/31
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あの10月12日、何が起きたのか?

「10月12日に台風が来たわけですが、前日の段階で台風が来れば電車を止めることになるだろうとは想定していたんです。そしてその想定通り12日の午後からは強羅からのケーブルカーを含めてすべてストップしています。そして12日の午後からもうものすごい量の雨が降り続きまして……。夜のうちには、小涌谷踏切にすごい量の水が流れ込んでいて路盤がえぐれていることはわかっていたんです」(菅原さん)

 台風19号における降り始めからの降水量は箱根町で1000mmを超えた。これは観測史上国内最高の雨量。箱根登山鉄道が強羅駅に設置している雨量計でも800mm近くを記録したという。とにかくとてつもない量の雨が、箱根に降り注いだ。

「ちょうど1週間前に台風15号が来たときには、当社沿線ではそれほど大きな被害はなかったんです。なので、今回もそのときくらいで収まってくれればと思っていたのですが、まったく想定を超えてしまいました。台風が過ぎた13日に徒歩で全線を点検する前は、小涌谷踏切の路盤洗掘くらいなら……と。ですが、実際に歩いてみるとそんなレベルではなかった。橋が流出しているわけですから、歩くことも難しい。被害の全容を把握するのすら、かなり時間がかかってしまったくらいです」(菅原さん)

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台風19号による箱根登山鉄道の災害発生箇所(箱根湯本〜強羅間)

被害は「70年に1度のレベル」

 何度もスイッチバックを繰り返しながら山道を登る箱根湯本~強羅間は、ほぼ全区間で木々に覆われた山の中を走っている。そのため、台風などの被害を受けやすいものだと思っていたが、今回のような長期運休に至ったのは1948年のアイオン台風で10カ月運休して以来だという。30年前にも台風で路盤がえぐれるなどの被害があったが、そのときには数日の運休で済んでいる。つまり今回の被害は70年に1度のレベル、というわけだ。

蛇骨橋。100mくらいの山の斜面がまるごとずり落ちた現場

「特に蛇骨陸橋の被害は大きいですね。目測でだいたい100mくらい山の斜面がまるごとずり落ちて、そのまま橋脚や橋桁も押し流してしまった。復旧にはもう一度橋を架けないといけないですし、弊社の敷地外のところにもかかわるので、公の機関との調整も必要です。被災直後から、地元の方には『いつごろ再開しますか』という問い合わせを盛んにいただきまして、でも正直私たちもわからない。ただ、いつまでも『わかりません』では地元の方に不安を与えてしまう。早期復旧に向けて各種調査や関係機関との協議の進捗を踏まえ、11月22日に来年秋頃の運転再開という目処をお伝えさせていただきました」(菅原さん)