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箱根駅伝 なぜ優勝候補の東海・青学は、エース区間の2区で「奇策」に出たのか

一方、東洋と國學院はエースを配置する「王道」

2019/12/31
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 王道か、奇策か――。

 12月29日に、年明けの箱根駅伝の各校区間エントリーが発表された。

©︎文藝春秋

各校の思惑がぶつかりあう区間エントリー

 今季は東海大、青学大、東洋大、駒大、國學院大の5校が「5強」として優勝候補に挙げられ、そこに東京国際大、帝京大といったダークホースも現れ、近年まれに見る「展開が読めない」駅伝になると言われていた。その前評判通り、各校それぞれの思惑がぶつかりあう区間エントリーとなった。

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 まず大前提として、実際の出走者はこの区間エントリーから往路・復路合わせて4名までは当日朝まで変更可能。そのため、戦術の重要性の高い区間には「当て馬」と呼ばれる当日交代濃厚なメンバーの名前を入れておき、他校の動向を見て判断することができる。

 ただし、本番までに実際に体調不良者やケガ人が出る可能性に備えて、少なくとも1枠は当て馬を使わず残しておくことが多い。そのため復路の変更も考えると、往路では最大でも「2人」の変更で終わることがほとんどだ。往路から3人目の変更が出た場合は、主力に何らかのアクシデントが出た可能性が高いと言える。

王道の「花の2区」にエースを置いた東洋大と國學院大

 さて、そんな中で5強各校のエントリーを見渡した時、各監督の狙いが最も顕著に現れたのがエース区間の「花の2区」だ。

「王道」を行き、エースを2区に置いて来たのが東洋大と國學院大。

 東洋大は今季学生長距離界では最強の呼び声高い相澤晃(4年)をエントリー。

 

東洋大学・相澤選手 ©︎文藝春秋

「区間記録保持者のモグスさん(山梨学大卒)の記録に1秒でも近づきたい」と語る相澤は、日本人歴代トップの記録のさらに上を見ており、それをなし得るだけの走力がある。前回は奇策とも言える4区に起用し、後続に2分近い差をつけただけに区間配置が注目されていたが、ここはキッチリと持ち場に配置してきた。酒井俊幸監督も「相澤がいるうちは正攻法というか、経験者を素直に並べてそのままレースをつくろうと考えている」と語っている。

東洋大学・酒井監督 ©︎文藝春秋

 國學院大は前回大会も同区間を経験して区間7位と好走している土方英和(4年)が順当にエントリー。もともとの走力はもとより、今季は出雲駅伝での逆転優勝の立役者になるなど駅伝力の高さも見せている。チームを率いる前田康弘監督は「メンタル面をコントロールできれば、いい走りをしてくれると思う」と語っており、優勝候補というプレッシャーに打ち勝てれば、十分に区間賞争いができるだろう。

国学院大学・土方選手 ©︎文藝春秋

 また、駒大も概ね戦前の予想通りのエントリー。前回も2区で9位とまずまずの走りだった4年生の山下一貴を起用し、今季10000mで学生最速記録を持つスーパールーキーの田澤廉は3区か4区での起用が濃厚となった。

駒澤大学・山下選手 ©︎文藝春秋

 この3チームに関しては2区の当日変更は、急なケガや体調不良が無い限りほぼあり得ないといっていいだろう。チームのエースを「花の2区」に置き、今から真っ向勝負で戦う手段に出たわけだ。