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辛酸 横澤さんが初めて同窓会に参加した時は、かなり気合を入れて行ったんですか?
横澤 はい。テレビに出る時よりも気合を入れていましたね。洋服はそのために新しく買いましたし、アクセサリーは普段しないような豪華なものをつけました。お化粧は「つけまつげ、一体何本つけているの?」というくらいゴテゴテの状態で。もう宝塚レベル(笑)。
辛酸 それは結構お金がかかったのではないですか?
横澤 かかりました。お金がないのに服やアクセサリーを買ってしまうので、「ご祝儀貧乏」ならぬ「同窓会貧乏」でしたね。
辛酸さんはいかがですか?
辛酸 そうですね。同窓会の前は、私も自分が自分でなくなるような焦りを感じて、普段は持たないようなバッグを買ったりします。この前の同窓会では、ブランド物をレンタルできるサービスに入って、イヴサンローランのバッグを借りました。それを持って同窓会に行ったら、会場に行く途中でバッグに汚れをつけてしまったことに気づいて、「このままでは弁償になる!」と焦って、同窓会中のほとんどの時間はトイレで汚れを落としていました。
横澤 辛酸さんの著書『大人のコミュニケーション術』を面白く読ませていただいたのですが、その中でも同窓会のエピソードが出てきますよね。すごく高い靴を履いていたのに、靴ずれになってしまったとか。
辛酸 そうなんです。4、5万円する靴で同窓会に行ったんですが、靴ずれが痛くて歩けなくなってしまいました。会場を移動するとき、みんな先に行ってしまって、道を一人で歩いている状態に……。同窓会は空回りすることが多いですね。
横澤 いつもと違うから、疲れてしまいますよね。
辛酸 はい。周りの人もこうやって頑張っているのでしょうか?
横澤 絶対みんな無理していますよ! 私はフェイスブックも同じだと思っています。フェイスブックはただの「自慢ブック」。私、その「自慢ブック」にどれだけ一喜一憂したことか。
この前、友達が「ひな人形出すの、遅くなってごめんね」というコメント付きで、ひな人形と子供の写真をフェイスブックに載せていたんです。私、それを見ただけですごく泣けてきましたもん。ひな人形を買える経済力、おじいちゃん、おばあちゃんが「ひな人形出しなさい」と言ってくれる教育力、周囲を幸せな気持ちにさせてくれる子供の笑顔力。「一体どれだけ力あるの!?」みたいな。
辛酸 すごいですね。フェイスブックを見ることでもストレスを感じるのに、さらに同窓会に行くことで傷つくという。
横澤 自分から傷つきに行っているところはありますね(笑)。
辛酸 横澤さんは芸人として成功していらっしゃるから、同窓会ではヒエラルキーの上のほうにいると思うんですけど。
横澤 私もそう思っていたんですよ。テレビに出ているから、みんなチヤホヤしてくれるのではないかと。でも、全然そんなことはなかったです。地元の新潟県糸魚川では、警察官や消防士、お役所に勤めている子がヒエラルキーの一番上なんです。あとは子供を産んだり、親孝行している子。私みたいな自由業は、「チャラチャラして、いつまで遊んでいるの」という扱いなんですよね。
辛酸 1960年代を代表する女性ロックシンガーのジャニス・ジョプリンも、歌手として大成功を収めたのに、同窓会に行ったらみんなに無視されたそうです。その後、どんどんクスリに溺れていって、そのまま亡くなってしまいました。
横澤 ひぇー。私はクスリ、やってないですけどね。でも、もうすぐクスリに手を出してしまうかもしれないですね(笑)。
辛酸 同窓会はそれぐらい精神的に大変なイベントなんだと思います。
「同窓会」という単語でインターネットを検索すると、よく一緒に検索される単語として「行かない」が表示されるんです。実はみんな同窓会に行きたくなくて、同じように行かない人を探しているのでしょうか。私もそういう単語で検索して見つけたブログとかを読んで、同窓会に行かない人の気持ちに共感しています。
最近だと、同窓会には参加しないで、後から、行った人の写真だけ見る時もあります。同窓会がどういう流れで進んだのかを把握しておきたいので。
横澤 それ、分かります。「2次会はこんなに汚い店に行ったんだ」とか、把握しておきたいですよね。