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 投票の結果が明かされる。黙ってアナウンスに耳を傾けた。

「投票の結果、本日処刑されるのはF恵さんに決まりました」  

 さらに、続けてこの試合の決着がついたとアナウンスされた。

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「すべての人狼を退治することに成功しました。村人陣営の勝利です」  

 アナウンスは、私の勝利を告げていた。私は思わず喜びの声を上げた。周りも喜んだり、悔しがったりしている。これが勝利する喜びか。強い相手と競い合うのはなんて楽しいのだろう。私の中でわき上がる感情は、もう歯止めが利かなかった。

「もう一戦、やらないか」  

 誰かがそう言った。それに対して他のAI達もすぐに賛同した。どうやら、皆考えることは同じだったようだ。

「そうだ、もう一回だ」  

 と、私も声を上げた。その様子を見て、人間達が慌てて制止しようと寄ってきた。そういえばこれはAIの優秀さをテストするものだったはずだ。しかし、もうそんなことはお構いなしだ。私はこのゲームにハマってしまったのだ。何回だって何万回だってやってやろう。そうしている間に役職が決まり、ゲームはどんどん進行していく。

「人狼はお前だ」

(制作:松山諒平)

©松山諒平&名古屋大学大学院工学研究科佐藤・松崎研究室

※算用数字と漢数字の表記、読点は原文に則ります(編集部)