北朝鮮は1月1日、平壌で開かれていた朝鮮労働党中央委員会第7期第5回総会での金正恩党委員長の報告内容を明らかにした。朝鮮中央通信によれば、金正恩氏は「世界は遠からず、朝鮮が保有することになる新たな戦略兵器を目撃することになる」と予告した。

朝鮮労働党中央委員会第7期第5回総会で演説する金正恩党委員長(朝鮮中央通信より)

新型ICBMも米本土すべてを射程に収めるものになる

 日米韓の情報当局はすでに、この発言が何を意味するのかを知っている。

「新たな戦略兵器」とは、北朝鮮が2019年12月に2度にわたって燃焼実験を行った固形燃料を使った新型ICBM(大陸間弾道ミサイル)を意味する。北朝鮮はすでに液体燃料を使ったICBM「火星15」(射程1万3000キロ以上)を保有しており、この新型ICBMも同じように米本土すべてを射程に収めるものになるだろう。

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 北朝鮮は火星15に使った新型の「白頭エンジン」を2017年3月に開発、同年7月にエンジン1基を積んだICBM「火星14」(射程8000キロ以上)を発射。同年11月にはエンジン2基を積んだ「火星15」を発射していた。

 北朝鮮はICBMの開発に国防科学院の科学者2000人が従事するとされ、エンジンを開発して4カ月から8カ月で、実際の機体発射に至る、というのが最大限の開発速度とみられている。

 また、固体燃料は液体燃料と違い、燃料を均等に燃焼させなければ、機体の安定が難しくなるという問題点も抱えている。技術の蓄積はあっても、液体燃料型ICBMをはるかに上回る開発速度は難しいかもしれない。

 金正恩氏が「遠からず」と言った時期は、おそらく、昨年12月から単純に計算すれば、今年春から初秋にかけてということになる。4月15日の金日成主席生誕記念日や、労働党総会でも盛大な開催を確認した、10月10日の労働党創建75周年を念頭に置いているのだろう。

朝鮮労働党中央委員会第7期第5回総会(朝鮮中央通信より)

米朝対話用に進めた融和措置を止めること

 次に、金正恩氏は「米国が朝米対話を不純な目的の実現に悪用することを絶対に許さず、わが人民が受けた苦痛と抑制された発展の代価をきれいに受け取るための衝撃的な実際行動に移るだろう」とも予告した。

 この意味も、日米韓の情報当局はすでに把握している。

 金正恩氏は「米国は中止を公約した合同軍事演習を実施してわれわれを軍事的に威嚇し、十数回の独自制裁措置を講じることで、われわれの体制を圧殺する野望に変わりがないことを世界に証明した」と述べ、「米国に制裁解除を期待して躊躇する必要はない」と語った。これは、米朝対話用に進めた融和措置を止めることを意味する。

 そして、日米韓は偵察衛星や高高度偵察機、通信情報などから、すでに北朝鮮の咸鏡北道豊渓里の核実験場、平安南道東倉里の長距離ミサイル発射実験場、平安北道寧辺の核関連施設、咸鏡南道新浦の4カ所で、それぞれ活発な動きが始まった事実を把握している。