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「日本人のがんは増えている」──その“常識”ホントに正しい?

マスコミ報道ではわからないカラクリ教えます

2017/05/06

日本人は昔に比べて健康になっている!

 なぜ、がんの死亡率が減ったのでしょう。それは、日本人が昔に比べると健康状態がよくなったからだと私は思います。

 前回の記事でも書いた通り、「喫煙」「飲酒」「食事」「身体活動」「体形」の5つの生活習慣を見直すことで、がんのリスクは最大で男性が43%、女性が37%も減少すると推計されています。現実にタバコを吸う人が減り、食事や運動の面で健康的な生活を心がける人が増えました。それに感染対策も進んだわけですから、がんの死亡率が減っても不思議ではないのです。

がんで死ぬ人が増えたのは「日本人が長生きになったから」

 とはいえ、「数で見ると、がんで死ぬ人は増えている」と反論の声も聞こえて来そうです。ですが、ここまで読んでいただければわかる通り、がんの死亡数増加の最も大きな要因は高齢化です。つまり、日本人が長生きになったことで、がんで死ぬ人が増えたのです。

 みなさんもご存知の通り、日本は世界に冠たる長寿国となりました。2015年の日本人の平均寿命は、女性が87.5歳で、男性も80.79歳まで延びています。ですが、男性の平均寿命が50歳を超えたのは70年前、1947年のことでした。戦前まで、日本人はまさに「人生50年」を地で行っていたのです。

 がんは、50~60代ごろから増える病気です。人生50年の時代には結核や肺炎など感染症で亡くなる人が多く、がんリスクが高くなる年齢まで生きられる人はそんなにいませんでした。しかし、多くの感染症を克服できるようになったおかげで、がんリスクが高くなる年齢まで生きられる日本人が増えたのです。

 がんの年齢調整死亡率が下がっているということは、がんを発症する年齢が遅くなっているということも意味します。実際、がんの専門医などに聞くと、昔はがんと言えば50~60代の患者が多かったそうですが、最近では70代以降の患者が増え、80代、90代で手術を受ける人も増えているそうです。このように、がん患者自体も「高齢化」しています。

がんは長生きに伴う運命のような病気

 残念なことに、若くしてがんになり、亡くなってしまう人もいます。ですから、高齢者だけの病気だとは言えません。ですが、大半の人にとってがんは、長生きに伴って受け入れなければならない「運命」のような病気だとも考えられるのです。

 それに、高齢になれば心疾患や脳卒中、肺炎など、がん以外の病気で亡くなる人も増えます。がんだけが特別な病気というわけでもないのです。だとすれば、いたずらにがんを怖がるよりも、できるだけがんにならないよう心がければいいのではないでしょうか。

 つまり、長生きして、健康でいられる期間を延ばしたいなら、まずは自分の生活習慣を見直してみるということです。どんなに健康的な生活をしていてもがんになる人はいますが、5つの生活習慣を見直せば、がんのリスクは大幅に下がるはずです。

高血圧、脳卒中、うつ病、認知症…様々な病気を予防して健康長寿を!

 がんだけでなく、5つの生活習慣を見直すことは、高血圧、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、うつ病、認知症等々、様々な病気予防にも通じます。タバコを吸わず、暴飲暴食を戒め、活動的な生活を送れば、健康長寿を果たせる可能性が高くなるのです。

 ゴールデン・ウィークですから、たまにはハメを外して構わないと思いますが、せっかくですから、休み明けにでも自分の生活を見直してみてはいかがでしょうか。

 それでは冒頭の問題の答えはこちらです。

問)日本人の胃がんは増えているでしょうか?

答)× 

 日本人の胃がんは減っています。年齢調整死亡率だけでなく、死亡数で見ても2010年をピークに減少傾向にあります。

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