待望するナゴヤ球場時代フード
意外な反響に驚いた。私の周辺にいるコアなドラゴンズファンから、この文春野球コラムでペナントレース前のオープン戦で書いた『ナゴヤドームは“ボールパーク”より“ナゴヤ球場”を目指せ』の評判がすこぶる良いのだ。未見の方は是非ご一読頂きたいのだが、「ドーム6階席に銭湯を設ける」とか、「外野席後方にあるレストラン席を大改造し立ち飲み屋街を作ろう」なんて夢物語をなんとか実現できないのだろうか?という提案が、かなりの同意を得たようなのである。なかでも是非実現を、との声が多かったのが、ナゴヤ球場時代のフード類の復活。ただ今でもドーム内では焼そば、味噌串かつ、そしてどて丼といった人気ジャンクフードは販売している。なのに熱望されるというのはどういうことなのか?
ファンの要望に応えるドラ営業の思い
つい先日の4月14日から3日間、春の竜陣祭と銘打ち、ナゴヤドームでは初の企画となる「D-1グランプリ」なるグルメ人気投票イベントが開催された。4部門に分かれ、それぞれ趣向を凝らしたメニューを用意。これが一番!と思う一品には投票シールを各部門ボードに貼ってもらい、3日間競い合うというもの。
中日ドラゴンズ企画営業部の水野陽一朗さんは「竜陣祭では初のイベント。多くのファンに喜んでもらいたい」と話し、またオープンデッキで初となるキッチンカー出店が今回の目玉であると取材に応えて頂いた。選手名がついた丼やティーンエイジャーが飛びつきそうなスイーツなど、来場したファンの多くが興味を示しそうなフードが用意されていた。実際に当日列を作って並んでいる、そんな賑わっている様子もこの目で確認した。イベントは大成功だったといえる。で、話は戻る。
伝承すべき名古屋ソウルフード
今でも販売されている焼そば、味噌串かつ、どて丼をひとまとめにすればナゴヤ球場フード。そしてナゴヤドームオリジナルの各種フード類にいまひとつどうしても食べたい感がわきあがってこないワケを考えた。出た答えは簡単明瞭だった。注文時には既にパックに詰められており、なんともコンビニ感が強いのが現状の売り方。目で見て、鼻で匂いを感じ、口にしたいと考える。そういう五感のくすぐりが現状のフード類には薄いというのが立ち飲み屋待望論につながっているのは間違いない。
イカ焼の醤油が焦げた香ばしい匂い。焼そばが焼かれた鉄板から沸き起こるウスターソース蒸気。使い古した鍋で揚げる串かつ。ほかほかの白メシの上にしっかり煮込んだどてヤキを乗せたどて丼。どれをとっても五感どころか六感、七感まで身体の全てを疼かせる欲求をナゴヤ球場時代のジャンクフードには感じたものである。
まさにこれは名古屋のソウルフードであり、しっかり後世にも伝えていかなければならない食文化でもある。マツダスタジアムにはカープうどん、甲子園にはジャンボ焼き鳥、ハマスタのシウマイ弁当やみかん氷、アメリカに目をやればボストン・フェンウェイパークのクラムチャウダー等々、世界どこの球場にも必ずと言っても良いほど名物フードが存在する。
ならばくどいほど提案するのだが、イチローが大好きだった焼そばを始め、串かつ、どて丼の三本柱はお客の目の前で調理をしてサービスするスタイルに一刻も早く変えるべきだ。ドームでは火を使っての調理ができないという都市伝説(消防法から来るのだろうか)を耳にするのだが、もしそれが本当ならば大村秀章愛知県知事、中日を愛して止まないと公言している河村たかし名古屋市長になんとかしてもらおう。
困った時の政治家。なんでも使えるモノは使って、ナゴヤドームの食文化向上につなげようではないか。とにかくナゴヤンジャンクフード文化を残す、そしてナゴヤドームに行けば美味いモノが食べられる、じゃあナゴヤドームへ行こう!という流れにしたいものだ。