「朝日」よりビシッとモノ申した「東京」の矜持
各紙は「首相は今なぜ」についてどう解説したのか。まず「朝日」は、
《衆参で3分の2の改憲勢力があるのに、与野党協調を重視する憲法審査会では改憲案発議への展望が開けないことへのいらだちがのぞく。保守派の不満も高まり、これに応える必要もあった。》
と解説。
続いて「東京新聞」。「期限と項目示し 議論の加速狙う」(5月4日)
「朝日」の解説と同様だが、そのあと「東京」はこう指摘する。
《権力の乱用を抑制し、個人の人権を保障する憲法をどう変えるかは、五輪開催と全く関係ない。》
《国民主権を明確にうたう憲法は、国民が権力者に守らせるルールと言える。そのルールをいつまでに、こう変えると首相が独断で決めるとしたら、立憲主義に反する。》
ビシッ!
こういうのを読むと「朝日」の購読者獲得のうえでのライバルは「読売」「産経」ではなく、同じリベラル派で「朝日」よりも最近キレがある「東京新聞」ではないかと思うのです。
次は「毎日」の解説にいこう。「首相主導で良いのか」(5月4日)
《首相には衆参両院の憲法審査会の議論が思うように進まない焦りもあるのだろう。》
《首相は「国民的な議論と理解」を呼びかけた。そのためには、首相が議論を主導するより、国会に委ねる方がいい。》
嬉しそうだけど、寂しそうな「産経」
一方、「読売」と論調が近い「産経」はどう書いているのか。
《安倍晋三首相が、いよいよ憲法9条改正への意欲を鮮明にし、「2020(平成32)年の施行」と具体的な目標まで設定した。首相がここまで言及したのは、国民投票と国政選挙の「ダブル選挙」が念頭にある。「加憲」を掲げる公明党に配慮して、長年の持論の実現に向け動き出したのだ。》(5月4日)
「産経」、とても嬉しそう。
首相は来年の9月に自民党総裁としての任期が終わる。3選出馬し当選すれば2021年9月までが新しい任期。そのなかで国民投票とのダブル選挙を仕掛けるのなら「18年秋の衆院選」と「19年夏の参院選」だと「産経」は張り切って解説する。
でも読んでいて気づいたのだけど、これってつまり「安倍首相の任期」の問題ですよね。東京五輪と憲法改正は関係ないことが逆にわかる気がするのだが。
あと、今回の読み比べでは「産経」の気持ちが少し気になった。「憲法70歳。何がめでたい」と1面で派手に主張した日に、「読売」に首相の改憲インタビューが独占で掲載された。同じ保守派なのになんで「読売」だけに……寂しい……という気持ちはなかったか?
その証拠に、翌日に「産経」は「2020年 新憲法を施行」と1面に書いたのだが、「改憲派が都内で開いた集会にビデオメッセージ」と報じた。読売インタビューについては一切触れていないのだ。
産経おじさんの「読売独占。何がめでたい」というぼやきが聞こえてきそうな読み比べでした。