1ページ目から読む
2/2ページ目

今でもあなただけが青春のリグレット

 その1年後、つい先日の5月6日にハマスタで行われたヤクルト戦。今永昇太が初回に2失点、さらに7回に3失点。一方でベイスターズ打線は苦手ライアン小川の前に完全に沈黙していました。多くのファンが今日の勝ちをあきらめかけていた8回、倉本寿彦のタイムリーで1点を返して、なおも満塁。バッターは梶谷。そりゃまぁ一発出れば同点だけどさ、そんな奇跡みたいなこと、起こるはず……

 起こった。

 起こっちゃった。

ADVERTISEMENT

 ツイッターのTLは喜びにまで到達できない、茫然状態から抜け出せないままのファンで溢れていました。5点差で勝っていたのに最終的に5点差で負けていたチームが、今5点差をひっくり返している。この意外性、この枯れかけた女性ホルモンがドバドバ分泌されていく感じ。これがベイスターズよ、梶谷よ。

 奇跡への歓喜にむせびながら、私は胸の奥の奥のほうでチクリとする痛みを感じていました。どうして私はあのとき、この人の可能性を信じ切れなかったんだろうと。ロマンが完成するのを待てなかったんだろうと。あのとき私が一瞬でも見限った梶谷は、今ベイスターズの押しも押されぬ主力となって、こんなに生き生きと野球をしている。私を許さないで、憎んでも覚えてて。この胸のかすかな痛みは、私の青春のリグレットとして永遠に残り続けるでしょう。

 元気でいますか? ちゃんとご飯食べていますか? 楽しく野球をやれていますか? 夢を求めて去っていった遠き日の元カレ(非実在)をなぜか思い出させる、梶谷隆幸、青い韋駄天。青春のリグレットは一回でいい。だから私は、信じるなら最後まで信じ抜くと決めました。ノーモアリグレット。カンバック白崎浩之。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/2474でHITボタンを押してください。