この春に新生活をスタートさせたシングルガールのみなさんに取材したところ、「何を着たらいいのかわからない」という、地味だが切実なお悩みが浮上して参りました。大学生はいわゆる「大学デビュー」を成功させたいと思っていますし、新社会人はオフィスでのファッションに四苦八苦。ていうか、オフィスカジュアルってなんなんでしょうね。オフィスなのにカジュアル。難しくないですか。私服と仕事着、セーフとアウトの境目がわからなすぎる……。
とはいえ、新しい環境にうまくなじめるよう、悪目立ちせず、しかしほどほどにオシャレな服を着たいというみなさんの気持ちは、すごくよくわかるんです。わたしもこの4月から「大学の先生っぽい格好」をしないといけないような気がして、デパートで白いシャツと黒いパンツを買いました。困ったらモノトーンだろ、という、非常に目の粗いオシャレ感覚ですみません。ちなみに、その服で教授会に行き、新任教員として挨拶をしたのですが、完全なる普段着と間違われたのには、我ながらウケました。ちゃんとした白シャツ黒パンツがそう見えないって、わたしは一体どんな人間なんだよ。
どのような服を着るべきか迷ったとき、思い出すのは映画『エリン・ブロコビッチ』と『プラダを着た悪魔』です。これを観ると、服にまつわる悩みが解消するとまでは言いませんが、半減くらいはします。
何を言われても「好きな服でキメる」女―『エリン・ブロコビッチ』
まず、『エリン』ですが、これは3人の子どもを持つ無職のシングルマザーが、法律事務所に無理矢理入り込み、公害訴訟に携わり、最終的に史上最高額の和解金を勝ち取ることになる、という奇跡の物語。しかもこれ、実話なんです。学歴がなくても、子育てが大変でも、女が仕事をして結果を残すことはできる。そんな風に思わせてくれる、実に頼もしい作品なんですが、それより何より、エリンの私服がすごいんですよ。胸の谷間バーン! ミニスカから美脚ズドーン! みたいな。どう見てもオフィス仕様ではない。言葉は悪いですが「アバズレ感」が漂っています。
そんなエリンに対して、ボスがこんなことを言います。「この事務所で本当に働くつもりなら服装を変えた方がいい」「女性スタッフの中には君のファッションに反感を持つ者がいる」……これは、悪目立ちするといいことありませんよ、というメッセージなわけです。ボスの発言は抑圧的ですが、本当に親切心から言っているとも取れる。
で、これに対するエリンの返事がふるっています。「ケチがついても似合うから着てるの。ヒップがタレないうちは、好きな服でキメるわ。いいでしょ?」……エリンは、たとえ悪目立ちしたとしても、自分が似合う服を着ると決め、その信念を貫き通します。もちろん、その格好のせいで、不真面目な従業員だと誤解を受けたりもするのですが、そんなのは誤解する方が悪い、とでも言わんばかりの全スルー。
彼女のやり方は、最初こそ風当たりが強いですが、仕事で結果さえ出していればその風もやがておさまっていくものだ、ということを教えてくれます。