ピッピッピッ、ピッピッピッ、ピッピッピッピッピッピッピッ。ベンチの上でグラウンドに背を向け頭上に両手を掲げて、笛を吹きながら三々七拍子で仕切る応援団長の音頭に合わせて拍手する内野席での応援。そして、ポケットから紙吹雪を取り出しサアーッとまいてひと区切り。これはまさに「昭和の風景」でした。この頃の外野席は、ベンチシートにまったりと寝そべっての野球見物。子供はキャッチボール、大人は将棋を指しながらも。

 現在は応援リーダーの定位置や大きな声援の中心は外野席になっています。それぞれ趣向を凝らしてトランペット演奏による選手の個別応援歌、チャンステーマなどで盛り上げています。選手たちも「あの声援でパワーをもらいました。応援のおかげです」とヒーローインタビューでスタンドに向かって感謝の言葉を。スタンドの応援も大きな後押しになっているのです。

7回裏攻撃前のメットライフドームのレフト側応援席 ©中川充四郎

FA移籍した岸孝之へのブーイングの是非

 5月7日(日)にメットライフドームで行われた西武・楽天戦でのこと。楽天の先発は、昨オフFAで西武から移籍した岸孝之でした。場内アナウンスで岸の名前がコールされると左翼席から「ブーッ!」。いわゆるブーイングが飛びました。要するに「西武を裏切って!」の思いからでしょう。しかし、このブーイングを認めたくないファンもその左翼席や三塁側スタンドに多く存在していたのも事実です。ここが難しいところなのです。

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 チームを応援することは「全員一致」でも、ブーイングに関しては「賛否両論」なのです。個人の思いですから、強制することもやめさせることもできないのがもどかしいところです。この試合、中村剛也、エルネスト・メヒアのソロ本塁打が出ましたが3対2で楽天の勝利。スタンドの「合わない歯車」がそのまま試合の結果に出たような気がしました。そして、岸のヒーローインタビュー時にも「ブーッ!」。

 わたしの個人的な意見ですが、ラフプレーや非紳士的な行為を働いた選手に対してのブーイングは大いに結構だと思います。でも、岸は自分で獲得した権利を行使して移籍した訳ですから、本人に非はありません。しいて言えば残留させることができなかった球団フロントに対してのブーイングならば分かります。

 昨季の終盤、遊撃手としてスタメン出場が多かった呉念庭(ウー・ネンティン)が打席に立つ度に左翼席から「ウーッ!」。単に応援の掛け声なのですが、最初はどうも「ブーッ!」としか聞こえませんでした。なんて紛らわしいのやら。