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「好きな芸人はミルクボーイ」 ロッテ・平沢大河が〝お約束”で言ってくれたあの日から4年……

文春野球コラム ウィンターリーグ2019

2020/01/15

 ちょうど4年前のいま頃、ぼくは撮影前の打ち合わせ場所に選んだ武蔵浦和のファミレスで、そのお笑いコンビと初めて会った。

 どうにか経費で石垣島の春季キャンプに行けないものかと、なかば趣味と実益をかねて企画した球団公認のDVDつきファンブック。そこに収録する撮りおろしムービー「突撃!! マリーンズ寮」のリポーター役にと、大阪からはるばる来てもらったのが彼らだった。

 版元は決して大きな会社ではなかったから、潤沢な予算があるわけじゃない。もちろんそこには、「いきなりオファーしても空いてそう」というスケジュール上の目論みもあった。でも、リポーター役に芸人を、というだけなら、往復の新幹線代×2名分がかからないほうが、経費的には安く済む。実際、東京にも候補は山ほどいたはずだ。それでもぼくは「彼らがいい」と当初の希望を押しきった。

 いちばんの目的は、当時の彼らが持ちネタにしていた里崎智也氏のモノマネを、若手選手たちに直接ぶつけること。それを動画に残すこと。たとえドスベったって構わない。ただでさえネタにしてもらえる機会の少ないマリーンズを持ちギャグにしてくれている芸人のことは、ちゃんと捕捉&フォローしておくのがこの本を自分が作る意義のひとつだ、とさえ思っていた。 

 いまTwitterなどを掘りかえしてみても、取材直前の時点で「数年後、今回のがお宝映像になりますように」なんてことをつぶやいているから、当時のぼくはわりと本気でそう思っていたのだった。

一夜にしてつかんだM-1ドリーム

 かくして、里崎氏似の風貌をもつ内海崇と、ボディビルがライフワークの駒場孝からなるそのコンビ、『ミルクボーイ』は、昨年末のM-1グランプリで、史上最多5040組の頂点に立った。

ミルクボーイの駒場孝(左)と内海崇 ©M-1グランプリ事務局

 4年前の動画では、「TVのバラエティはよく観る」という当時ルーキーの平沢大河に、「好きな芸人は?」と聞いて、半笑いの「ミルクボーイさん」という模範解答をムリクリ引きだしていたあの彼らが……。広報の梶原さんに「サトのマネやって」とそそのかされて、二木康太や岩下大輝といった若手たちのまえでキッチリ微妙なリアクションをされていたあの内海くんが……。抑えきれない筋肉愛から寮内のトレーニングルームで半裸になって池田重喜寮長(当時)を困惑させていたあの駒場くんが……。テレビの前で音を立てて、ブレイクした。

 そもそも、M-1までは地元の大阪でさえ「TVのバラエティ」に出ていなかった彼らが、一夜にして人生を変え、たった2週間足らずのあいだに、国民的番組『紅白歌合戦』に出て、「芸人になったときからの夢だった」という、お笑いの殿堂『なんばグランド花月』の舞台に立ち、『オールナイトニッポン』の1部でパーソナリティまで務めてしまったのだから、人生はなにが起こるかわからない。