――ふさおさんは、コピック(マーカー)とかスキャナーとか、いろいろ道具を買ってくれたんですよね?
高田 コピックは、ふさおさんにねだって誕生日プレゼントとして買ってもらいましたが、スキャナーは自分で購入しました。基本、ふさおさんの使うものは私が買ってあげて、私が使うものはふさおさんが買ってくれることが多いんです。使うときに「ありがとう」って言いながら使えるし……。夫婦だからひとつの家計なので、どちらが払っても結局は一緒なのですが(笑)。
――ご両親は村で出会って結婚されて、高田さんと妹さんは村で生まれて、高田さんが19歳のとき、家族みんなで一緒に村を出られたそうですが、単行本が発売されることになって、ご両親、妹さんの反応は?
高田 両親や妹には、マンガを投稿したこともウェブで連載していたことも話していませんし、できあがった本も渡していません。両親は、無職の私を心配していて、社会保障のある仕事でないと余計な心配をかけると思うので……。東京で研究職をしている妹は、一般の人と職場結婚をして幸せそうに暮らしていて、村の話はあまりしていないようなので、知らないほうがいいのかな……と。
家族とは今もちゃんと交流はありますよ。少し前までは1カ月に一度くらいは会っていましたが、最近は忙しくてあまり会えていません。たまに寂しそうに「どう? 元気でやっている?」って親から電話がかかってきます。両親も今は一般社会で元気に暮らしていて、父は会社勤めをしながら休日は魚釣り、母はコーラスグループを掛け持ちして、忙しそうにしています。
――では、完成した初めての単行本を、渡したい人はいますか?
高田 村を出て一般社会で働き始めたとき、同じ職場にいた人が、私が休憩時間に描くちょこちょこした落書きを気に入ってくれて、家に持ち帰って小さな息子さんと一緒に楽しんで見てくれていました。その息子さんは、私が遊び心で描いた部分もきっちり指摘してくれたんです。例えば、惑星の絵にバラを添えて描くと、その子は「これは『星の王子さま』のバラだね」と当てるんですよ。
結婚を機に退職することになったとき、その会社の同僚が「あなたはいつか本を描くだろうから、できたら連絡して」と、住所を書いたメモをくれたので、私も大真面目に「じゃあ私の最初の本は必ず進呈します。サインも付けます」と答えました(笑)。
あれから10年経ちましたが、この作品を描いているときも「あの息子クンなら、きっと細かいところも見て、指摘してくれるだろう」と、折々に思い出していたので、あの親子にはぜひ読んでほしいです。