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ネットで話題、労働や空腹、体罰に耐えて暮らした少女時代の実話

『カルト村で生まれました。』 (高田かや 著)

genre : エンタメ, 読書

――当時は、少女マンガのキャラクターを模写されていた?

高田 はい。中学時代は、もっと目がキラキラした少女マンガっぽい絵を描いていました。毎日絵を描いていた中学生の頃が、一番上手だったような気がします。村の子はみんなマンガに飢えていたので、周りに私の絵を喜んで欲しがってくれる子が大勢いるという環境も、大きかったと思います。

 大人になってからしばらく絵を描いていなくて、描き方を手が忘れてしまっていたのですが、会社を辞めて休んでいた夫と北海道旅行に出掛けたとき、2カ月間毎日絵日記を描いていたら、初日と比べてだいぶ絵が上達していたので、やっぱり描き続けることが重要なんだなぁと思いました。

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――この作品を描くにあたって、参考にされた本はありますか?

高田 パソコンで描くことが苦手なのと、小さい頃から刃物を触る機会のない生活を送っていたので、カッターが怖くてスクリーントーンも使えないので、トーンのない時代のマンガを図書館で探して、まずは『サザエさん』を参考にしました。その後、「紙面が白っぽい」と指摘を受けたので、色々探した結果、家にあった夫のマンガの中で、トーンをあまり使っていなさそうな『クッキングパパ』や『サイクル野郎』を熟読して研究しました。あとは、児童書のブースにあった『まんが家になろう!』という入門書や、京都精華大学の教授もされているマンガ家の竹宮惠子さんが書かれた『マンガの脚本概論』など、題名に「マンガ」が入っている本を片っ端から読みました。

――実は、『カルト村~』を読んだ校閲さんから「こういう手書き文字っぽいフォントがあるんですか?」という確認の電話がきたんです。読者からも、手書き文字の美しさと読みやすさを絶賛する手紙がきていましたが、字は昔からきれいだったんですか?

高田 小学校と中学の頃は、当時流行していた丸文字を書いていて、世話係さんに怒られていました。村の高等部で、五十音のお手本とともに字の練習をする時間が頻繁にとられていたんですが、お手本の字が気に入らなかったんです。それで、せっかく練習するならやる気の出る字がいいと思い、同学年の中から一番好きな字を書く子を探して、その子に五十音を書いてもらって、その字をお手本に字の練習をしました。私の字の原型は、その子の字なんです。

まるで活字を打ったみたいに整った読みやすい文字!
料理好きのご主人、ふさおさん

――マンガにも登場するご主人のふさおさんは、連載が決まったときや、単行本化が決まったとき、どんな反応でしたか?

高田 ウェブに掲載される時は、内容が内容なだけに「載せて大丈夫か?」と心配していましたが、単行本化が決まった時は「すごいね、がんばれー」と言ってくれました。私がマンガを描くことを応援してくれていて、締め切りが近い日など、家事を全てやってくれることもありました。

 ふさおさんは、以前私が正社員として会社で働いていたとき、夜10時くらいまで残業すると不機嫌になっていたんです。でも今は夜中の2時までマンガを描いていても文句を言わないので、「以前より遅くまで仕事しているけれど、いいの?」と聞いたら「何時になろうが家にいるなら目が届くからいいの」と言っていました(笑)。

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