本作は、もともと投稿作品でした。その「平成」の話とは思えない衝撃的な内容、シンプルでかわいい絵、手書き文字の美しさが目に止まり、CREA WEB「コミックエッセイルーム」で紹介したところ、SNSで拡散され、「続きが読みたい」と大反響。所有のない社会を目指す「カルト村」出身の著者に本作が生まれるまでを伺いました。

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カルト村で生まれました。

高田 かや(著)

文藝春秋
2016年2月12日 発売

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――『カルト村で生まれました。』は、文藝春秋の「コミックエッセイルーム」に投稿された作品が、ウェブ連載を経て単行本になったわけですが、そもそも文春に応募しようと思われたきっかけは?

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高田 マンガをたくさん出している出版社より、カルト村に対して前知識がある出版社の方が、注目してもらえるのかなと思ったんです。それで、私のいた村のことが書いてあった『カルトの子』(著:米本和広)の出版社ということで、文藝春秋のサイトを見ているうちに「コミックエッセイルーム」の存在を知って、じゃあ送ってみようと。それまで、マンガの投稿は一切したことがありませんでした。

――作戦成功でしたね(笑)。高田さんの投稿作品を見て、「すごい!」と感じたので、『カルトの子』の編集担当者に見せたところ、やっぱり「すごい!」という感想だったので、なんとか世に出したいと思ったんです。

高田 それで、「コミックエッセイルーム」に投稿作品の「ちょい見せ」企画を新設していただき、掲載となりました。

――ウェブに掲載したら、すぐに「いいね!」がたくさんついて、精神科医の斎藤環さんのSNSでも拡散されて話題になったので、改めて「単行本化を前提とした連載」として、原稿をお願いしました。ところで、村ではマンガが禁止だったそうですが、どうしてこんなに上手に描けるんですか?

高田 確かに村ではマンガが禁止だったんですが、学校の友達に借りて村のトイレなどで隠れて読んで、よく絵を真似して描いていたんです。世話係さん(村では親と子が離されて暮らしているので、子供の世話や説教を担当する大人)に見つかったら没収されてしまうので、押し入れの上のほうとか、マンガの隠し場所を工夫していましたね。

 村の子が学校の友達から借りたマンガを又貸しさせてもらって布団の中でこっそり読んでいるときに、世話係さんが見回りにきて、没収されてしまったときは真っ青になりました。泣きながら世話係さんにしつこく訴えて、なんとか返してもらいましたが、そのあとお仕置きが待っていました……。お小遣いがないから、買って返すこともできないんですよね。

――その頃読んでいたのは、どんなマンガだったんですか?

高田 矢沢あいさんの『天使なんかじゃない』とか、神尾葉子さんの『花より男子』とか……。でも、当時はマンガならなんでもよかったんです。『のらくろ』でもいいからマンガが読みたかった(笑)。学校の図書館に『火の鳥』と『ブラック・ジャック』と『ベルサイユのばら』があったので、それも借りて読みました。

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