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【ロッテ】お立ち台の舞台裏。塀内久雄、上がれそうで上がれなかった男に想う

文春野球コラム ペナントレース2017

2017/05/18
note

“持っていない男”の一番の思い出とは?

「一番の思い出は05年と10年の日本シリーズ。その両方で最後、グラウンドにいたことです。05年がセカンド。10年がファースト。どっちも守備固めの途中出場ですけど、日本一が決まった瞬間にマウンドにいられた。みんなと喜びを分かち合えた。最高の思い出です」

 塀内は今日もマリーンズアカデミーコーチとして昼過ぎまで球団事務所で子供たちのカリキュラム作りをした後、レッスン場に向かう。そんな日々だ。ある時、ふと私はサプライズを思いついた。ずっと欲しがっていたヒーロー・マーくんを彼の机の上にそっと置いておいた。「もらっていいのですか? ありがとうございます」。それを見つけた本人はすぐに意味が通じたらしく嬉しそうな笑顔を浮かべた。

念願のマーくん人形を抱える塀内久雄氏 ©梶原紀章

ヒーローインタビューは一生に一度の晴れ舞台かもしれない

 広報は毎年、沢山のヒーローインタビューを取り仕切る。それが日々のルーティン業務のようになってしまう時があるが、それは違う。選手にとって、それは一生に一度の晴れ舞台かもしれない。かけがえのない思い出となるかもしれない。私はいつでもそのことを忘れてはいけないと思っている。

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 ちなみに塀内は通常シーズン以外で一度だけヒーローインタビューを受けている。12年10月6日、松山で行われたソフトバンクとのファーム日本選手権。先制適時打を放ち、地元・愛媛でヒーローとなった。この時、人選をしたのも私だ。「きょうは地元での試合。スタンドには親類、お友達が大挙して観戦にお越しになったと聞いていますが」とのインタビュアーの問いかけに「ハイ。4人です!」と返答をしたのが今も懐かしい。

梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)

※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/2571でHITボタンを押してください。

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