1ページ目から読む
2/2ページ目

もう我慢できない、あの秋山がついに覚醒した!

 だけど、先日の対中日戦。秋山が1失点完投勝利を飾ったあの試合を見て、私はもう我慢できなくなった。大声で叫びたくなった。もういい、さすがにもう大丈夫だろう。

 今季の秋山はちがう。今季の秋山は変わった。

 あの秋山がついに、ついに覚醒した。ずっとずっと期待され続けてきた才能が、プロ8年目でようやく開花したのだ。

ADVERTISEMENT

 いやあ、なんだろう、この痛快な気分は。なにしろプロ8年目である。普通ここまで時間がかかったら、どんな逸材でも結局は開花しないまま終わるというのが一番多いパターンだ。かつての阪神ではマイクの愛称で親しまれた左腕・仲田幸司がプロ9年目の1992年に一気に覚醒し、最初で最後の二桁勝利となる14勝を挙げたことがあったが、あのマイクでさえ前年までの8年間で通算33勝(シーズン最高8勝)を記録していたため、秋山とは状況が異なる。秋山は過去7年間で通算6勝しか挙げていないのだ。逆に言えば、その程度の実績しかない投手が毎年のように期待され、苦節8年目で大変身を遂げたのだ。

あの斉藤和巳が開花したのも8年目だった

 まったく、こんなことってあるのだろうか。私は秋山の覚醒を喜びつつも、あまりに前例が思い当たらないことから生まれる、不安と戸惑いも感じている。

 しかし、過去の実績とのギャップが大きい遅咲きの大投手という定義で、よくよく前例を探したところ、元ホークスのエース・斉藤和巳の名前が見つかった。斉藤もまた、大型右腕として期待されながらも、高卒7年目までは故障等によって通算9勝(シーズン最高5勝)しか挙げられなかったが、秋山と同じ8年目の2003年にいきなり20勝を記録。短命ではあったが、全盛期の大エースぶりは今も強烈な印象として残っている。

 そう思うと、一気に秋山にロマンを感じてしまう。こうなったら、秋山拓巳は斉藤和巳を目指すべきだ。拓巳と和巳、無理やりだけど似ている気もする。今季の秋山の活躍ぶりに、さすがにもう我慢ができなくなった私は、まるでタガが外れたかのように遅咲きの大エース誕生を夢見てしまうのである。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/2578でHITボタンを押してください。