「週刊文春」最新号(5月25日号)には、非常時にまつわる記事がある。「転落死も…『痴漢』と言われたら逃げるは恥か?」「わがアニサキス戦記」だ。前者は痴漢の疑いをかけられた者が線路に飛びおりて逃走するリスクと、疑われた際の対処についてである。後者は……

「戦場取材」や「ガン闘病記」とは違うルポの面白さ

「わがアニサキス戦記」は、アニサキスにやられてしまった医療ジャーナリスト・長田昭二が、自分の身に何がおき、どう対処したのかをまとめたルポである。ルポといえども、戦場の取材やガンなどの生き死にに関わる闘病記というような、大きな問題を題材にしていないのが、かえって面白い。

「週刊文春」5月25日号

 長田は居酒屋で一杯やった後、得体の知れぬ激痛に見舞われる。おまけに、医療ジャーナリストということもあって、あれこれ詮索しては不安になり、余計に苦しむこととなる。痛みの正体はアニサキスなのだが、この寄生虫は魚介類にひそみ寿司や刺し身などを介して体内に入り込んで食中毒を引き起こすことが多い。おまけにやたらめったら痛いと評判である。

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 そんな具合にたった一人で痛みと不安に苛まれ続けた長田を救うのは、「#7119」であった。東京消防庁が開設している「救急相談センター」につながる電話番号である。

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 ここに電話すると、「医師や看護師などが、症状から考えられる病気を類推し、適切な対応をアドバイスしてくれる」そうだ。ぶっちゃけ「119」に電話するのは難易度が高い。死にそうなわけでもないけれど、かと言ってこのまま病院が開くまで耐えるのもしんどいし……といった中途半端な症状だったり、あるいは住宅地のため夜中にピーポーピーポーと救急車に来られて、近所のひとに集まられでもしたら、たまらんな……などと余計な心配をしてしまい、「119」に電話するのをためらう人も多かろう。そんな場面で便利な電話番号なのである。

 でもって、ひととおりの話をした後、「タクシーで行けるので、今から受診可能な病院を教えて下さい」と乞うて、タクシーで緊急外来のある病院に到着するのであった。