AV業界を熟知する水道橋博士としみけん、カンパニー松尾監督が見てきた女優たちとは? 「かつてはAV女優として頑張りますって言葉はなかったけど、今は頑張りますの人たちばかり」。大人知的トークで人気のテレビ番組「水道橋博士のムラっとびんびんテレビ」単行本化記念、特別座談会のその2です。
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博士を刺激したバクシーシ山下の世界観
博士 俺なんかは、芸人の世界で、テレビ対応していない漫才をやろうとしていたわけ。AVで社会派と言われるバクシーシ山下監督なんかがやっていることは、要は、世界にはないことにされている現実を、実はあるんだよ! と拡張して作品にしているわけだよ。事実はこういうもんだぜ、人間はこういうもんだぜ! という世界観をAVでやるから、俺はすげえ刺激されるわけ。俺はアンダーグラウンドで、テレビ以外のところで漫才をやっているから強度の強いものが作れるのに、こうやって映像作品で俺よりもすごいものをやる人がいるんだということで興味を持ったのよ。
*バクシーシ山下 1967年生まれ。岡山県出身。大学在学中にAV業界へ。90年に「女犯」で監督デビュー。社会派AV監督として名高い。
しみけん なるほど。そういう興味を持つ人って今の時代にいらっしゃいます?
博士 しみけんなんか、地下クイズ王だから、もともと興味を持つ人だろうけど、一般にはどうだろうね。俺はパンクで芸人をやっているからね。当時ロック雑誌だった「宝島」に載っていたパンクロッカーの人たちに負けたくなくて、彼らが「出産以外は全部やった」って言うからさ、ダッチワイフ、電動こけし、流血、出産、脱糞とか悪趣味を詰め込んだコントを昔はやってたのよ。それをライブハウスで見て女子高生とかゲロゲロ吐いてさ。これは浅草キッドの伝説のコントと言われるけど、そういうのをパンクだと思ってやってた。気持ちとしては、芸人がパンクロッカーになんか負けるわけないじゃん! ってね、本気で思っていた。だからこういうAV自体も、バクシーシは特に気が狂ったのばっかりやってたから。
松尾 たしかにそうですね。90 年代は面白いことをする合戦みたいな風潮が、V&Rにもあって。それがどんな風に人を楽しませるかとは考えていなかったけど、たまたま社長の安達かおるが率先してうんこを撮ったりしている人だったので、部下の俺たちもあの人があんだけやってて成り立っているんだから、なんでもいいじゃねえか、と調子にのって各自撮ってましたね。
しみけん なんかおふたりの話を聞いていて、俺、悔しいなあと思って。今の時代でもできることがあるんじゃないかって、模索しながら聞いてて。
松尾 ありますよ。気持ちの問題ですから。