★(2)よりつづく

『水道橋博士のムラっとびんびんテレビ』(水道橋博士 しみけん 著)

「ムラっとびんびんテレビ」をやるのは世間から白い目で見られたいから! 気焔をあげる水道橋博士の芸人・AV論から、カンパニー松尾監督によるしみけんの生き方指南まで。どこに行くかはわからない、AV業界深堀り座談会のその3です。

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水道橋博士が憧れたAV男優の潔さとは

博士 今、昭和から平成のAV女優の変遷って語られますが、男優も最初は人間のクズというか、変態の極みみたいなのが集まってて……。

松尾 はははは。

しみけん 今でもそうですよ(笑)。

博士 それがだんだん、ヒエラルキー化されて汁男優とか作られたりするんだけれど、俺らのころは無責任の極みみたいなやつばっかが男優をやってた。芸人からすると、芸人よりも、さらにもっと開き直っていて全てをさらしてやっている潔い男たちの集団なんだって思えて憧れたのよ。たけし軍団をこのまま続けようか、それともAV男優になろうかって本当に思ったよ。

*AV男優の世界は下の階層から、エキストラ、汁男優、フェラ男優、男優、印紙男優、トップ男優となる。汁男優は本気でAV男優を目指す人の登竜門になる(しみけん『光り輝くクズでありたい』より)。

(左より)水道橋博士さん、カンパニー松尾さん、しみけんさん

しみけん 先輩の話とか聞いているとめちゃくちゃで、とにかく酒なんですよ、出演料が取っ払いだから、もうその日のお金はその日のうちに使っちゃうので、よくお酒を飲んで高円寺とかの駅前で酔いつぶれている。で、本当に酔いつぶれると人って重たいし、みんな無責任だから先輩を置いて帰る。で、キャバクラから出てきた別の先輩がその先輩を拾ってまた飲みに行ったりとか、酒の数珠繋ぎなんですよ。

松尾 言い方は悪いけど、女からも結構搾取してたよ。

博士 当時は、彼らにプロ意識がないからさ、プロダクションが管理してないから。たけし軍団も、AV女優と仕事の絡みがあって、飲みに行こうってなったら、基本的に全員ヤッちゃうのよ。そのころ、たけし軍団はそういう、ヤッてもいい集団だったから。昔はAV監督も女優さんを送っていったらさ、その後はどうしてもヤろうとする。今はスタジオで管理されたセックスをするだけだけど、昔はAV女優と恋愛をしようとか隙あらばヤろうとしていた。

松尾 90年代はそうですね。2000年に入ってきちゃうとだいぶ変わってくる。要するに、ソフトオンデマンドができたのと同じくらいから企業概念が生まれて。エロ本あがりのワンマン社長がやっていた会社が、企業化された。それまでは業界自体が一匹狼みたいな人ばっかりという感じでしたから。

しみけん 時代を区切ると、博士はフィルム、松尾さんはビデオの創成記、ぼくなんかはDVDの時代だから、やっぱり新しいんですよね。ビデオ時代は60分で1本の作品なんですよね。その60分の中に1絡みないし2絡み入れる。ビデオ時代の男優さん、例えば沢木和也さんは展開が早いんですよ。だから、コスプレものなのに、下から上をカメラで煽(あお)ったときにもう裸になってましたから、すげえ早いなあ、と。でもこの方はビデオテープの時代を生きた方だからそうなんだと。

松尾 それを補足すると、ビデオテープ時代は全体の尺が短いんだよね。45分とか60分で1作品なんですよ。90分、120分になるとテープ代が高くなるから。DVD時代になると、120分、130分までは同じ価格なんです。だったら長いほうがいいっていうことになる。

しみけん それでぼくは出てきた男優なので。

松尾 1絡みに35分尺40分尺とか使ってって言われるもんね。いまだに「尺どれくらいですか?」みたいなやりとりが絡み前にあるの?

しみけん もちろんあります。これ全体が何分作品ですか、というのも訊きますし。

松尾 だから今、男優さんがすごいんだよね。男優さんが構成を組み立ててくれますし。時計とか置いとくの? それとも腹時計でやるの?

しみけん 時計を置いとくところもありますし、でも9割は腹時計ですね。

松尾 だよね、自分の感覚で35分とか40分とかのタイミングで。ノーカットだったら、それに応えなきゃならないじゃん。時計を見ている見ていないにかかわらず、この人たち時間通りにちゃんとやるんだよね。1分違いくらいで、ほとんど狂わない。

しみけん 40分で絡みをやってくれと言われたら、39~ 40分の間にはやります。

松尾 だから俺からみれば、今の男優はすごいなと。シビアですよ。

しみけん シビアなほうが乗り越えるときに面白いですからね。500円玉拾ったと思ったらパチスロのコインだったとか、基本そんなすかしばっかりだから。それでも面白いんですよね、すかしたコインが大当たりすることもありますし。