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オリラジ中田敦彦を「フェイク問題に警鐘を鳴らす芸能人」扱いしたNHKの罪

「YouTube大学」問題の核心は、内容の誤りではない

2020/01/19

 2018年に関西を襲った台風21号により、関西国際空港が孤立したのは記憶に新しい。当時、空港には3000人の旅行者が取り残されたが、翌日にバスによる旅行者の輸送が始まると、「中国大使館がバスを手配した」という投稿がSNSで拡散される。

 中国大使館の行動にSNS上で称賛が集まる反面、台湾の駐日大使館に相当する台北駐日経済文化代表処(以下、駐日事務所と記す)に対して、台湾のSNS上で批判が集中するようになり、遂には台湾の大手メディアや野党議員まで駐日事務所の批判をはじめた。厳しい批判に晒された駐日事務所の大阪事務所長は命を絶つ。

台風21号通過後、関西国際空港からバスに乗る人々の行列 ©iStock.com

フェイクの拡散が1人の外交官の命を奪った

 しかし、事務所長が命を絶った翌日、バスを手配したのは中国大使館ではなく関西空港だったことが明らかになる。駐日事務所に対する批判は根拠のないフェイクだったのだ。

 1人の外交官の命を奪ったこのフェイクの拡散には、ほとんど悪意が介在していない。みんな事実だと思って、義憤からその拡散や駐日事務所批判を行っている。中田のコメントはこの番組の内容を受けてのものだから、フェイクを拡散することに対して、悪意の有無はまったく関係ないのだ。

 このような背景があって出たコメントである「責任をもって発信する」。皆がそうすべきと中田が言ったことを、当の中田自身が行わずビジネスに勤しんでいるのが問題なのだ。

間違いを指摘しても得するのは中田だけ

 また、他に多く見られた中田擁護論は、「間違っているならそれを指摘して、より良いものにしていけばいい」といったものだ。が、これらは一笑に付すべき意見だ。

 単純な話で、中田がビジネスの一環としてやっているYouTube大学に、どうして無給でそれに協力する義理があるのだろうか。数十分もある動画をいちいちチェックして、一つ一つチェックを行ってそれを指摘して、得られるものは何もない。ただ得するのは中田とYouTube大学の運営スタッフだけだ。動画のクオリティ確保は中田らが考えるべきもので、それも「責任」というやつだろう。

 そもそも、YouTube大学の内容に誤りがあるとの指摘は、昨年の冬あたりからSNSで広まっていたが、YouTube大学自体は2019年4月に始まったものだ。ということは、半年近くその内容が問題視されていなかった訳で、つまりYouTube大学の視聴者に動画の問題を指摘するような人がいなかったということだ。この運営方針のまま続けていても、改善は望めないだろう。

©iStock.com

NHKはそこんとこ分かってる?

 Yahoo!ニュース個人に記事を書くにあたって、いささかの葛藤があった。なぜかと言えば、騒動になればなるほど、YouTube大学の広告になり、オンラインサロンといった中田のビジネスを支援することになりかねないからだ。実際、記事で取り上げた動画の再生数は、記事公開から3日経たずして13万回も再生数が増えていた。

 しかし、自分を執筆に向かわせたのは、NHKのフェイクニュース問題番組に出演し、フェイクをどう防ぐかなんてエラソーなこと言ってる人間が、自分のビジネスでは真逆な態度を示していた点である。

 中田が「責任をもって発信することが大事」とNHKクローズアップ現代+の公式アカウント内で発言したのは2019年3月。翌月にYouTube大学が始まり、さらには12月にNHKのフェイク問題番組で司会を務めた。この間フェイクや誤りを拡散し続けた中田を「フェイク問題に警鐘を鳴らす芸能人」として番組(それもタイトルが「フェイク・バスターズ」!)に出演させたのは明らかに問題だし、今後もそうなってはならないだろう。

 そこんとこ分かってる? NHK。

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