青天目澄子の家族写真に秘められた「父との距離」
――そんな感じで、寝て食べて、マイペースな澄子ですが、松本さんから見て澄子はどんな子なのでしょうか。
松本 本当にいい子だと思います。あとは好きなものが多い子だなと。食べる、寝る、そして歌う。単純ですけど、生きていく上では大事なことだと思います。ストレスもたまらないですし。
――でも実は澄子の背景は結構複雑なんですよね……。
松本 そうなんです。本当のお母さんが亡くなってて、新しい若いお母さんが家に来てるんです。だから兄弟はみんな連れ子。家族で写っている写真がちょっとだけ出てくる場面があったんですけど、この写真を撮影するとき、私、少しだけお父さんとの間に距離をとったんです。澄子はおばあちゃんっ子で、おばあちゃんとは手を繋いでいるんですけど、お父さんや新しいお母さんには距離感があるはずだと思って……。
――ボーっとしているように見えて、いろいろなものを抱えて東京にやってきた役どころなんですよね。
松本 田舎の家には居場所がない感覚です。それで東京に来て、やっと居場所ができたという。舎監の愛子さんのことを「お母ちゃんみたいだね」と言うのも、何も考えていないように見えて澄子なりにいろいろ辛い思いをしてきたから。いつも寝ている澄子が、ひとり夜中に起きてておばあちゃんを思って泣いているとか……。なんだか悲しくて。だけど、寝たら忘れちゃう澄子の性格って大事で、強い子でもあるんです。辛いことがあっても、寝たり食べたり歌ったりして、乗り越えてきた。
――もしかしたら、乙女寮の中でも一番強いハートを持っているのが澄子なのかもしれませんね。
松本 いくら寂しくても田舎に帰るという選択肢は澄子の中にはないので、仕事は明日からも続くわけで。
福島弁の訛りを覚えるために……
――ドラマの中ではいろいろな地域の方言が飛び交っていますが、ご苦労はありますか?
松本 秋田、福島、青森、山形、茨城とみんな違う方言ですから、イントネーションが他の人の訛りに引っ張られることもあります(笑)。ひとりずつ方言指導の先生がついていてくださるんですが、先生がセリフを喋っている音源を繰り返し聞いて訛り方を覚えてます。リハーサルから現場にいてくださるので、リハが終わると先生たちがぞろぞろ出てきて、ひとりずつ「あそこは違う、言ってみて」とか(笑)。方言のデパートです。
――それではアドリブは難しい……。
松本 余計なことを言って方言が間違っていたらNGですから最悪です(笑)。アドリブといっても、せいぜい銭湯帰りに歌を歌っているときに空を見て「きれいだね」くらいかな。それもテストの段階で言ってみて、先生に確認して、という感じだったので、純粋なアドリブはほとんどないと思います。
――松本さんご自身は大阪のご出身ですよね。
松本 はい。普段は普通に関西弁です。流暢ですよ(笑)。関西の方とお仕事で一緒になるとつい出ちゃいますね。だけど、仕事では役のこともあるので気をつけています。
――確かに気をつけないと、時子さんのオーディションみたいになっちゃう……。
松本 早口言葉の「武具馬具武具馬具三武具馬具」のところとか(笑)。あそこ面白いですよね、大好きなシーンで大笑いしちゃいました。